彼女とは価値観が合うと言っていたが実は

本

 

先日、学生の頃からの友人に会った時のこと。

 

友人の名前は仮に『田代』とする。

 

田代は数年ぶりに彼女が出来たという。

 

その彼女は会社の後輩で、それまで何年も仕事を一緒に仕事をしていたのにほとんど会話をしたことがなかったらしいが、打ち上げの飲み会で意気投合したのだとか。

 

そんな田代は無類の活字好きで、彼女とも本の話で盛り上がった。

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彼女の本性は実は・・・

田代「じゃあさ、○○著の××って読んだことある?」

 

彼女「それは読んだことないです。○○の△△はすごく良かったです」

 

田代「△△読んだんだ!○○なら××が最高傑作だよ」

 

田代は彼女にその本を貸すことを約束した。

 

○○はロシアかどこかの文豪で、△△が代表作。(俺が無知なので失念)

 

××は田代の十数年来の愛読書で、擦り切れるほど読んでいるらしい。

 

また、田代はやや潔癖で神経質なところがあり、彼女に貸すにはあまりにも酷い状態だったので、新しい物を買って彼女に渡した。

 

本を渡した翌週の月曜日、彼女が田代のところにやって来て、興奮気味に話し始めた。

 

土曜日の朝から食事も忘れて読みふけっていたという。

 

日曜日もそんな感じで、分厚い本の4分の3ぐらいまで読んでしまったと。

 

その週末、本を返してもらうのを口実にデートに誘い、二人は交際することになった。

 

本の感想は田代が期待した通りで、“彼女とは価値観が合う”と思ったそうだ。

 

「で、その本は面白いの?大して興味はないけどさ」

 

田代「これだけど読んでみるか?まあ、お前は絶対読まないだろうけど」

 

田代がカバンから取り出した分厚い本には几帳面にブックカバーが掛けられていたが、さらに可愛らしい手提げ袋に入っていた。

 

なんでも、彼女が返してくれた時に本を入れていたものらしい。

 

案の定、俺は一生読むことがないだろう小難しい本だった。

 

彼女とのノロケ話をBGMに、俺はその本をパラパラとめくっていると、本の間から何かが落ちた。

 

新品だと言っていたその本のページには大きな油ジミが。

 

落ちたのはスナック菓子の欠片だった。

 

他のページにも挟まっている。

 

さきいかのカスと思われる糸状のものも出てきた。

 

そして最後のページには、しおり代わりに使っていたと思われるティッシュペーパーが。

 

しかも、何かを拭いた形跡がある。

 

俺はその本を閉じ、黙って友人に返した。

 

あの時、さきいかのカスやティッシュペーパーはこっそり抜いて渡すべきだったか。

 

それとも、その場で「なんだこれ~?」ぐらいおちゃらけてみた方が良かったのか。

 

彼女とは結婚も考えているという幸せそうな田代の顔を見るたび、俺はモヤモヤしている。

 

(終)

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