窓から見える向かいの病室
数年前に入院していた時の話だ。
俺は左足首を骨折しており、
ずっとベットで横になっていた。
松葉杖に掴まって歩くことは出来たが、
大して知り合いもおらず、
毎日ぼーっと窓の外を見ているのが
入院生活での日課だった。
そんなある日、
窓から見える向かいの病室に、
俺と同じ歳ぐらいのお姉さんが
入院していることに気付いた。
とても綺麗なお姉さんで、
ついつい見惚れてしまった。
すると、
そのお姉さんも俺に気付き、
微笑んでくれた。
俺は彼女に会ってみたくなり、
喜々としてそのお姉さんの病室に
行ってみたのではあるが・・・
そこには誰もいなかった。
俺は不思議に思いながらも
自分の病室に戻ったが、
ふと窓から向こうの病室を見ると、
あのお姉さんが確かにいる。
俺はどうしても彼女に会いたくなってしまい、
紙に『俺の病室に来て下さい』と書き、
窓の向こうに見えるように掲げた。
すると、
彼女は恐ろしいほど大きく口を開けて笑い、
こっちに向かって飛んできたのだ。
しかも、
彼女には下半身が無かった。
俺は不覚にも恐怖のあまり、
気を失ってしまった。
結局、
そのお姉さんが何者だったのかは
分からずじまいだった。
でも、
本当に綺麗なお姉さんだった。
(終)