夢で見た光景と目覚めた直後の現実
去年にあった話。
ヘトヘトで仕事から帰って来たので、
着替えもしないで帰って来た格好のまま、
テレビも電気もつけっ放しで
ソファーの上で寝てしまっていた。
これから起こるのは一体何なのか・・・
ハッと目が覚めたら、
なぜか部屋は真っ暗。
しかも、ちゃんとパジャマを着て
布団に入っていた。
「あれ?いつのまに?」
・・・と思いつつ、
時間を確認するために携帯を取ろうと
体を動かそうとするも、
何故かビクとも動かない。
金縛りというのは全く頭に無くて、
ただひたすらハテナの状態。
すると、
玄関のドアノブをガチャガチャと
激しく回している音がする。
狭いワンルームなので、
今居る場所から玄関までは見渡せる。
体は動かせなくても、
玄関の様子は視界に入る状態だった。
次の瞬間、
誰かが部屋に入って来た。
強盗とかそういった感じではなく、
靴をポイポイっと脱ぎ捨て、
自分の家に帰って来たかのような
堂々とした雰囲気。
「隣の人が間違えて入って来た!
部屋汚いのに恥ずかしい!
こっちに来る前に、
間違えていることに気づいて!」
なんて私は思っていた。
が、私の願いも虚しく、
その人物は短い廊下をツカツカと渡り切り、
部屋の電気のスイッチを押した。
電気が完全に点く直前の
チカッチカッと点滅している間に、
知らない男の姿が見えた。
黒のフルフェイスのヘルメットに、
黒のライダースジャケット。
そして、黒のパンツ。
さらに男の左手は、
青いポリタンクを持っている。
そこで目が覚めた。
電気もテレビもつけっ放しで、
帰って来た格好のまま、
ソファーに寝転がっていた。
「なんだ夢か・・・」
と時間を確認すると、
帰宅してから30分程しか経っていない。
私はエントランスのオートロックを過信して、
玄関ドアの鍵を閉めない習慣があり、
その日もやはり閉めていなかった。
でも変な夢を見た後だったので、
念のため鍵を掛けに玄関へ行った。
すると・・・
鍵をガチャンと閉めたと同時くらいに、
向こうからドアノブをガチャガチャと回された。
それは本当に同時くらいで、
絶妙なタイミングだった。
私はビックリして動けなかったが、
その間もドアノブは激しく回されていた。
ドアの向こうに居る何者かに、
在宅を悟られてはいけないような気がして、
息を殺してじっとしていた。
しばらくしてそれは止んだ。
直後、ドアスコープから外を覗いたが、
誰も居なかった。
まさか、
あの変な夢は『予知夢』だったのか?
もし、鍵を掛けるのがあと一歩遅かったら、
何者が入って来ていたのか?
そう思うとゾッとする。
(終)