路上に捨てられた物置
昔、家の近くに怖いおっちゃんが住んでいた。
怖いと言ってもヤクザとかではなく、ただ単に頑固なだけだったのだが。
友達と悪さをしているのがバレると、よく走って追いかけてきて怒られた。
何を見たのだろうか・・・
その日もイタズラをして逃げていたのだが、追いかけられている途中に小さな物置が捨ててあるのを発見した。
鍵も掛かっていなかったし、そろそろ息も切れていたので、そこに隠れることに。
しかしすぐバレたようで、おっちゃんは「そこに隠れたのは分かってるんだぞ!」と言いながら、物置の扉を開けた。
おっちゃんはニヤニヤしながら物置に首を突っ込み俺を探していたのだが、ある一点を見た途端、おっちゃんの顔色が変わった。
冷や汗を流し、ガクガクと震え出したかと思うと、訳の分からないことを叫びながら扉を閉めて逃げていった。
俺は何があったんだろうと思いながらも、物置から出て帰宅した。
その日以来、おっちゃんはほとんど外に出て来なくなった。
家の窓にはカーテンが閉められ、庭の世話もしていない。
ある日、俺がおっちゃんの家の前を通りがかった時、何かに怯えているような様子のおっちゃんが話しかけてきた。
「おい、俺がもしあの物置の所に行こうとしたら、何をしてもいいからとにかく止めてくれ!頼む!」
鬼気迫る様子に、俺はただ頷くしかなかった。
おっちゃんが失踪したのはそれから一ヶ月も経たないうちのことだった。
朝早く、あの物置があった運動場の方面にふらふらと歩いていくのが目撃されたのが最後だったらしい。
捜索願いが出されたにもかかわらず、おっちゃんは発見されなかった。
しかし、10年ほど経ったある日、おっちゃんはふらふらと戻ってきた。
顔は薄汚れ、髭は伸び放題だったが、服は失踪した当時のままだった。
おっちゃんは気の毒にそれ以来気が狂ってしまった為、10年近くどこに行っていたのかは分からなかった。
おっちゃんはあの物置で何を見たんだろう・・・。
(終)