不思議な運命を感じる指輪
これは、宝飾の卸をやっていた頃の不思議な話。
デザインも輝きも、一目でビビッときた『指輪』があった。
結果的に自分のものになったけれど、手に入れるまでの経緯が運命的だった。
その指輪は、展示会などに出してはすぐに売れ、でも数日後に返品を何度も繰り返していた。
皆で「なんでこの子ばかり戻って来るんだろう?早く良い持ち主さんに出会えるといいね」と、指輪に親心まで感じていた。
なので本当に売れて旅立ってしまった時は寂しかったけれど、本当に良かったと喜んでいた。
だけど、その数年後に出会うことに。
仕事を辞めて3年が経った頃、当時仲の良かった業者さんと出先でバッタリ出会い、業者向けの販売会に誘われて行ったら件の指輪を見つけた。
私が勤めていた会社のさらに卸にあたる業者なので、価格もかなりリーズナブルになっている。
この指輪はいわゆる流れもの(返品を繰り返している)商品で、“曰く付き”のように言われていた。
私が買うとなった時、「絶対に返品しないでね」と念を押され、さらに格安で入手することが出来た。
身に着けて特に運が上がるとかはないけれど、着けていないと落ち着かなくて、精神安定剤のような感じになっている。
そして普段でも、旅行など遠方で失くして諦めて帰って来ても、必ず見つかるので不思議な運命を感じている。
(終)