その石に抱き付いていると病が治る
これは、知り合いから聞いた不思議な『石』の話。
彼の地元の寺社跡に、変わった石があるのだという。
なんでも、子供ほどの大きさがあるそれに抱き付いていると病が治る、のだと。
言い伝えによれば、昔その山には鬼がいて、人を獲っては喰らっていたと言われる。
何故かこの鬼が襲うのは病人ばかりで、特にその患部を好んで食していたらしい。
やがて鬼は死んだ。
徳の高いお坊さんに折伏されたとも、ただの自然死だったともされ、詳細ははっきりしない。※折伏(しゃくぶく)=悪人・悪法を打ち砕き、迷いを覚まさせること
鬼の骸は石へと転じ、その山にある寺に置かれた。
これがその石の由来で、『御抱え石』などと呼ばれている。
「鬼の奴、石になってもまだ喰い足りないのかな。
いや俺は抱き付いたことはないよ。
健康な者が抱き付いたら、どこ喰われるかわかったモンじゃないだろ」
酒を飲みながら、彼はそんな話を聞かせてくれた。
(終)
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