通学路にだけ現れていた不気味なバス
これは、私が中学と高校の時に体験した不気味な話。
ある日の中学校からの帰りのこと。
電車通学だったけれど、学校から駅に行くまでは8分くらい歩かなければいけなかった。
仲の良い友達といつものように歩いていると、“1台のバス”が前方からやって来た。
そのバスは見た目がかなりのオンボロで、「廃車みたいだなぁ」と思っていた。
そしてバスが私と友達の横を通り過ぎた時、そのバスの座席に座っている人たちを見て、私は思わずビクッと驚いてしまった。
・・・というのも、バスの座席は満員で沢山の人が乗っていたけれど、“全員が同じ顔をしていた”から。
バスが見えなくなってから、私は友達に「今の見た!?ヤバイよ!全員同じ顔しててめっちゃビビったんだけど!」と言った。
すると、「はぁ?何言ってんの?全員同じ顔とか意味わかんない」と、笑いながら返された。
話をよく聞いてみたところ、友達にはあの不気味なバスが普通のバスに見えたそうで。
一緒にいる友達にそう言われて、「見間違いだったのかなぁ?」と、その日はそれで終わった。
それから3日くらい経った頃、またあの不気味なバスが前方からやって来た。
私はとっさに顔を伏せてしまったけれど、「見間違いなのか?そうではないのか?」がとても気になったので、意を決してバスに視線を向けた。
見間違いではなかった。
やはり、客の全員が同じ顔をしていた。
それ以降、バスは短くて3日に1回、長くて1ヶ月に1回、私の前に現れるようになった。
同時に、そんな不気味なバスにも慣れてきた私は、「おっ、今回は1週間かかったか〜」なんてことを考えるようにもなった。
そうして日が過ぎていき高校に進学したけれど、中高一貫校だったので通学路は変わらず、バスも相変わらず私の前に不定期に現れた。
ただ、高校に上がった頃から、バスに乗っている客に変化が現れ始めた。
それまでは皆が色んな方向を向いていたけれど、少しずつ視線が同じ方向に向いていることに気がついた。
客の顔は少しずつ窓の方、つまり私達の方へと向き始めていた。
そのことに恐怖を覚えた私は、バスが前方から来ても、そちらの方へ向くことをやめた。
そして高校を卒業し、上京した。
それから数年が経った今、すっかりバスのことを忘れていたけれど、ふと思い出した。
ただ、上京してからは見ていないので、多分あのバスはあの通学路にしか現れないのだろうと思う。
もしあのまま見続けていたら、私もあの乗客の仲間入りだったのかもしれない・・・。
(終)