たまたま後ろを向いたらソレがあった
これは、私が十数年前に自衛隊に居た時に、ある演習場で起きた不可解な出来事です。
当時、夜間歩哨訓練で、穴に二人一組で警戒をしていました。※歩哨(ほしょう)=警戒や見張りの任にあたること
時間も経ち、交代がやって来て、異常無しの申し送りをしてすぐ裏の天幕に入った矢先でした。
「うわーっ!!」
今さっき交代したばかりの者の叫び声が響きました。
何だ何だと小隊長以下20名近い隊員が飛び出して駆けつけると、歩哨の穴のすぐ裏に、“身体が半分になったまだ温かいウサギの死体”がありました。
不思議だったのは、私が交代時にそこには何もなかった事と、警戒していた者は音も気配も感じなかったという事です。
気付いたのは、たまたま後ろを向いたら「ソレがあった」との事でした。
しばらく周囲を捜索し、原因も掴めないまま訓練続行となりました。
皆、見えない恐怖に怯えていました。
私に至っては、「仮眠せずに天幕の人数を確認して1時間毎に報告しろ」との任を頂きました。
結局、猛禽類の仕業が有力と思われましたが、ウサギをそこまでした者の正体は掴めぬままでした。
後日、他の小隊の天幕でも、仮眠をしていたら頭をしつこく撫でられることもあったそうです。
これらの出来事を、未だ不思議に思っています。
(終)