その登山者ノートには不思議がいっぱい
これは、登山道で不思議な体験をした話。
昔、屋久島の宮之浦を縦走したのだが、その途中で滑落しかけた。
縦走後半、小屋に向かう登山道の脇に、一か所だけ草が生えている場所がある。
しかし、その草は登山道に被る形で草が生えているだけで、そこを踏み抜くと落ちてしまう。
というより、落ちかけた…。
とっさに登山道にしがみ付き、落ちずに済んだが。
そのまま小屋へ向かった。
小屋には“登山者ノート”があり、ここを訪れた人が好きに色んなことを書き込めるようになっている。
ページをパラパラとめくり読んでいると、書かれてある内容に興味をそそられた。
そのほんの一部を紹介しよう。
『登山道にワープゾーン。落っこちて、登山道を一瞬でワープしてここへ来れた。ラッキー』
『草トラップに気を付けろ!』
『帰りなら良かった。結構キツイ登りをまたやる羽目になった』
『草のおかげで助かりました』
等々、草のトラップに関することが大量に書き込まれていた。
数年前から書き込まれているので、おそらく小屋を管理している人もその草について気が付いているはずだが、放置されているようだ。
何故なのか。
毎年ちょっとだけそこの草を刈れば済むはずなのに。
考察(あとがき)
◆“助かった人だけ”が書き込んでいたとしたら…
登山道の草は危ないだけでなく、草のおかげで助かったと書かれてあることから、管理者も安易に草を刈れないのだろうか。
◆“助からなかった人だけ”が書き込んでいたとしたら…
Q.登山道にワープゾーン
↓
Ans.霊界へ逝ってしまわれたか?
Q.草トラップに気を付けろ
↓
Ans.死者からの素直な忠告か?
Q.帰りなら良かった
↓
Ans.死んだことに気づかず無限に登りを繰り返す地縛霊か?
Q.草のおかげで助かりました
↓
Ans.死者からの管理者への皮肉か?
(終)