出かけたっきり帰って来ないお母さん

踏み台

 

私は今、

一人でお風呂に入っているの。

 

さっきまでは、

お母さんも家に居たんだけど、

 

今は出かけてる。

 

私が「シャンプーない」って伝えたら、

すぐ買いに行ってくるって。

 

優しいお母さん。

 

でもね、出かけてからもうすでに

一時間も経ってるのに、

 

まだ帰って来ないの。

 

・・・遅いなあ。

 

スーパーはすぐ近くなのに、

どうしたんだろ。

 

『ピンポーン』

 

玄関のベルが鳴った。

 

あっ、お母さんかな?

 

私は急いで服を着て、

玄関に向かった。

 

慌てていたから、何か箱みたい物を

蹴っ飛ばしてしまったような。

 

玄関の扉を開けてみたら、

違う人だった。

 

あーあ、

お母さん遅いなあ・・・

 

でも、その時はまだ

気がついていなかったんだよね。

 

実はね、お母さんは、

ずっと家に居たらしいの。

 

いつもよりすごく背が高かったから、

気がつけなかったの。

 

もっと早くに気がついてあげられたら

よかったのに・・・

 

ごめんね。

 

(終)

解説

私がお風呂に入っている間に、

お母さんは家で首を吊っていた。

 

自殺していたのである。

 

慌てて蹴ってしまった箱のような物は、

おそらく踏み台。

 

いつもより背が高かったのは、

首を吊っていたから。

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