娘を愛しすぎた母親
その母親は、
5歳の娘を事故で亡くした。
娘を亡くしたショックと悲しみで、
母親は毎日泣いていた。
1年が過ぎた頃からだろうか。
やっと悲しみは薄れてきたのか、
少しずつだが平静を取り戻しつつあった。
支えてくれた夫。
そしてなにより、
亡くなった娘の3つ下の次女を
育てなければならないという、
気持ちが大きかったのかも知れない。
次女が5歳になった時だった。
5歳の誕生日を境に、
次女は大泣きするようになった。
泣いている理由は全く分からないが、
その泣き方は尋常でなかった。
心配になった母親は、
次女を病院へと連れて行く。
担当の医師は泣いている次女と
二人きりで話した後、
話した内容をそのまま母親に伝えた。
「娘さんは、
地獄に落ちたと泣いています。
意味が分からないのですが、
何か心当たりはありますか?」
それを聞いた母親は、
その部屋の窓から医師を突き落とし、
殺めてしまう。
そしてそのまま、
自身も身を投げて自害した。
(終)
解説
次女が泣きながら訴える
「地獄に落ちた」というのは、
先に亡くなった長女のこと。
長女が地獄に落ちた理由は分からない。
が、次女の言葉を信じた母親は
長女のもと(地獄)へ行くために、
医者を殺して大罪を犯し、
自殺したのである。
長女を地獄で守りたい、という、
母親の愛なのかも知れない・・・