深夜2時の喪服姿の女性客
彼はタクシー運転手をしていました。
ある日のことです。
深夜の2時頃、
人気の無い街の郊外を走っていると、
道路脇に喪服を着た女性が
手をあげて立っていました。
(こんな時間になんで
喪服なんて着ているんだ?
気味が悪いな・・・)
と思いましたが、
このご時世です。
客を選んではいられないので、
その女性を乗せて走り出しました。
女性は目的地を言わず、
掠れそうな小さな声で、
「・・・右にお願いします」
「・・・真っ直ぐ行って下さい」
と言うだけで、
終始うつむいていました。
(気味の悪い女だな・・・)
と思いつつも、
彼は言われた通りに車を走らせました。
しばらく言われた通りに進んだ時、
(まさか・・・)
と彼は思うようになり、
額から冷や汗が垂れ流され、
ソワソワと挙動不審な態度に。
「・・・そこを左に」
そう言われた時、
彼は『間違いない!』と確信しました。
「・・・そこで止まって下さい」
後ろからその声が聞こえ、
彼は全身に汗をかき、
顔面蒼白で身体はガタガタと震え、
気が狂ったように泣き叫びながら、
「ごめんなさい!許して下さい!
そんなつもりじゃなかったんです!!
許して下さい!ごめんなさい!
うああああああぁ!!」
すると、
後ろの女性がハッキリとした声で、
「なんで逃げた」
(終)
解説
女性はすでにこの世にいない人。
彼が運転するタクシーにひき逃げされ、
死んでしまったのである。
おそらく女性が案内した場所は、
ひき逃げの現場だと考えられる。