お連れの方と降りたものだとばかり

タクシー乗り場

 

これは、タクシー運転手の知人がお盆中に体験した奇妙な出来事。

 

深夜、酔っ払いの男性客二人をタクシーに乗せた。

 

ただ二人とも乗車した途端に、こっくりこっくりと大人しく居眠りを始める。

 

目的地に着いたので声をかけて起こし、料金を支払って二人は降車した。

 

しかし、今日の営業はこれで終わりにしようと思って営業所へ帰る途中に、「おい!どこ走ってるんだよ!」と、後ろからいきなり声をかけられた。

 

運転手の知人はビックリして、慌ててタクシーを路肩に止めた。

 

「あ、あれ?お客さん、さっきお連れの方と降りたものだとばかり…」

 

「あいつとは行き先が違うんだよ。とにかく△△△まで行ってくれ!」

 

「か、かしこまりました」

 

もう一人の”謎の客”を乗せながら、知人はあれこれと思い返していた。

 

『確かに二人一緒に降車したのを確認している。…ってことは、今後ろに乗せているのは幽霊か?もしそうだとしたら、目的地に到着した時に客が座っていたシートだけが濡れて客は消えていた…という話をよく聞くから、ひとまず冷静に目的地まで送り届けよう』

 

やがて、目的地に到着する。

 

客は消えていなかった。

 

ちゃんとお釣りまでやり取りして、降車したその客はマンションの入り口まで歩いていった。

 

『はぁ…よかった、人間で…。じゃぁ、さっき二人降ろしたと思っていたが、あのどちらかが幽霊だったのか!?

 

結局は何が何だかよくわからない夜だった、知人はそう言っていた。

 

(終)

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