自宅で不審な日記を見つけた
1904年8月、
私は自宅で不審な日記を見つけた。
我が家は6年前に結婚してすぐに、
妻と選んで購入した中古住宅だ。
妻と二人の娘は、
一昨年の船旅中の事故により、
他界してしまった。
二人の愛娘は、
後日に別々の場所に
打ち上げられたが、
結局は還って来なかった。
先日、
改築のため大工を呼ぶと、
妻の部屋の天井裏から
日記が出てきたと手渡された。
その日記は間違いなく、
妻の字で書かれていた。
日記の内容はこうだ。
<7/15>
今日から私と貴方の生活が
始まりますね。
(私と妻の結婚記念日だ)
<9/21>
貴方のために、
今の私が作られました。
<12/9>
それでも私は貴方を放さない。
<2/23>
もうすぐです。
<2/29>
理解して頂けましたか?
私は恐怖のあまり、
遠い街へと引っ越した。
(終)
解説
1904年に、
天井裏から不審な日記は
見つかった。
その日記は、
妻が書いたものだった。
妻は一昨年、
つまり1902年に亡くなっている。
なので語り手は、
この日記が書かれたのは
1902年より前と思っていた。
そして日記を読み始める。
日記の最後に、
このような一文がある。
<2/29>
理解して頂けましたか?
ここで重要なのは、
文章ではなく日付。
2/29という日付は、
閏年(うるうどし)にしか来ない。
閏年は4の倍数の年のことなので、
この日記が書かれたのは1900年か、
1904年。(※6年前に家を購入)
実は閏年には例外があり、
100の倍数は含めず、
400の倍数を閏年という。
なので、
1900年は当てはまらない。
つまり、
この日記が書かれたのは1904年。
日記は1904年に書かれたとなると、
おかしな部分がある。
妻は一昨年、
1902年に亡くなっている。
なのになぜ、
この妻の書いた日記があるのか?
それは、
妻が今も生きている。
それに、
家の天井裏で日記が
見つかっている。
そう、妻はずっと天井裏で
暮らしていたのだ。
<12/9>
それでも私は貴方を放さない。
と書かれていることから、
語り手の夫に浮気されたか
捨てられたのか・・・