バイトをしていたカラオケ店の天井裏から

カラオケ

 

5階建てのカラオケ店でバイトしていた時の話。

 

3階の部屋が客で埋まったら4階に、

4階が埋まったら5階に、

 

という感じで部屋を回すのがお決まりだった。

 

なぜなら・・・

 

一つでも部屋を使うと最後にそのフロアを全て

掃除しなきゃいけないからだ。

 

なので仮に3階が埋まっていても、

5分ぐらいで部屋が空きそうなら、

 

「今満室なんですよ。5分程・・・」

 

という感じで客を待たせ、

4階を使わないようにする努力をしていた。

 

さすがに待ちが二組以上だったら、

上の階も開放していたが。

 

問題の騒動が起きたその日は、

平日だというのに珍しく4階まで埋まっていた。

 

帰っていくような客もいなかったので、

仕方なく5階を開放した。

 

・・・と言っても、

 

5階に入ったのは父母子供二人の

4人家族一組だけ。

 

部屋に案内して1時間ぐらい経った頃だった・・・

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カラオケ店には霊が棲み憑くというが・・・

その家族のいる部屋から苦情が来た。

 

何やら5階を走り回る子供がいるらしい。

 

インターホンに出た店長は、

 

「すぐ注意しに行きますので・・・」

 

と言って謝っていた。

 

店長は各部屋の人数や年齢をチェックしたが、

 

5階の家族がいる部屋以外には、

小学生以下の子供がいるような部屋は無かった。

 

店長は俺らスタッフにも、

 

「今日って子供入ってたっけ?」

 

と訊いてきたが、

 

「今日は子供入ってないっすね」

 

と返事をした。

 

3階~5階の見回りをしてみるも、

子供は見つからなかった。

 

「やっぱり子供はいないですね」

 

と報告していたらインターホンが鳴った。

 

もちろん5階の家族部屋から。

 

・・・曰く、

 

子供がまずます騒がしく走り回っている、

との事。

 

こりゃまいったな・・・と思い、

とりあえず飲み物でも出すことに。

 

「申し訳ありません。

これはサービスになります」

 

飲み物を渡して俺は1階に下りた。

 

すると店長が、

 

「ちょっとフロント見といて。

俺は上に行ってくる」

 

と小走りで上がっていった。

 

まさか5階か?なんて思っていたら、

家族部屋からのインターホンが鳴る。

 

出てみると、店長からだった。

 

「○○(俺)

 

ちょっと脚立と懐中電灯持って

この部屋に来て」

 

と頼まれた。

 

俺は言われたものを持って、

5階の家族がいる部屋に向かった。

 

部屋に着くと、

何やら店長と父親が話していた。

 

上を見ると、

 

普段は鍵がないと開けられない

天井裏のフタが開いていた。

 

天井からフタがプラ~ンと垂れ下がり、

溜まった埃がフワフワと降っている。

 

「○○、脚立押さえてて」

 

そう言うと店長は脚立に上がり、

 

天井の穴に上半身を突っ込んで

何やら点検している感じだった。

 

「鍵が壊れちゃってるみたいですね。

申し訳ありません」

 

店長は申し訳なさそうに言った。

 

(子供がうるさいわ天井裏のフタが開くわで、

この家族も災難だな)

 

(今日は料金頂くわけにはいかないな)

 

などと俺は考えていた。

 

「どこの部屋の子かしら?

親御さんは心配してないかしら?」

 

子供二人に抱きつかれた母親が、

俺に訊いてきた。

 

文句を言われると思って構えていたので、

反応が遅れた。

 

「3階の方かも知れないですね(嘘)

あはは・・・」

 

と返事をすると、

 

「どうやって上がったのかしらね。

そんなに簡単に上がれるものなんですか?」

 

と言われる。

 

「エレベーター以外にも階段がありますから。

 

なので階段を使って上に来ちゃったんじゃ

ないですかね・・・」

 

と返した。

 

ひと呼吸おいて、

今度は父親が俺に向かって言った。

 

「歌ってたら急にバン!と

上のフタが勢いよく開いて。

 

ビックリして上を見たら、

 

知らない子供が頭だけ出して

部屋を覗いてたんですよ

 

・・・ゾワっとした。

 

・・・ブルっとした。

 

(おい、マジかよ店長!言えよ馬鹿!

怖えーよ!俺早く下に戻りてえよ)

 

と思った。

 

「私たちビックリしちゃって・・・

 

しばらく何も言えずにじーっと

その子供と見つめ合ったんです・・・」

 

と母親。

 

「ボク、危ないよ?と言おうと思ったら、

スっと顔を引っ込めて逃げちゃったんです」

 

と父親。

 

「誠に申し訳ありません。

すぐ別の部屋を用意させて頂きます」

 

店長はそう言うと、

 

俺に別(3階か4階)の部屋に

案内するよう指示した。

 

飲み物などは全てそこに置いたまま

新しい部屋に案内し、

 

「今回は御代の方は結構ですので」

 

と新しく飲み物をサービスした。

 

思わぬ展開に家族は喜んでいたが、

俺はブルっていた。

 

家族を案内した後に5階の部屋に戻ると、

店長がニヤニヤしながら言った。

 

いやさ、鍵壊れてるって言ったけど、

実は壊れてないんだよね・・・

 

怖えぇー!(笑)

 

俺はその時、チビったかな。

 

どうやら・・・

 

なんとか誤魔化そうと、

鍵が壊れている事にしたらしい。

 

上半身を天井の穴に突っ込んでいる時は、

 

正直「こんなところ覗きたくねえ・・・」

と思っていたとか。

 

とりあえずフタを閉めて鍵を閉め直し、

部屋を片付けてフロントに戻った。

 

この騒動の何が一番怖いって・・・

 

俺は思い出したんだ、

店のルールを。

 

『一部屋でも使ったら最後にそのフロアを

全て掃除しなくちゃいけない』

 

という事を。

 

店を閉めるのは深夜3時頃。

 

店長が何か言いたそうに

じっと俺を見ていたのを覚えている。

 

俺はその日、0時で帰った。

 

翌日出勤すると、

店はその話題で持ちきりだった。

 

何やらあの後、

 

遅番の人が5階を閉めに行ったら、

天井のフタがまた開いていたらしい。

 

技術専門スタッフの要請を本社に連絡し、

しばらく5階には客を入れなかった。

 

(終)

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