ある変電所で年に一度「命日」と呼ばれる日
これは、過去に電力会社の下請けで作業員をしていた俺がその時に聞いた怖い話。
ただ特定を避けるため、少しだけ改変している部分はある。
各家庭に電力を配る配電用変電所というのは、小規模で無数にあるので普段は人がいない。
しかも、建物はコンクリートの打ち放しで、築30~40年のものがゴロゴロとある。
その日の作業は禁止されている
建物は薄汚れているし、中も暗く、まるでサイレントヒルの廃病院のような雰囲気だ。(サイレントヒル=コナミから発売されたホラーゲーム)
特に地下変電所は真っ暗な中で電灯をつけながら進まないといけないので、何もなくても怖い。
なので、普段でも一人で作業をする時は結構不気味なのだ。(俺は怖がりだし・・・)
そんなわけで、仕事仲間らと飲んでいる時に「変電所にまつわる怪談とかないんですか?」とふざけて聞いてみたら、社員と別の下請けの人がこんな話を教えてくれた。
某都市部の地下配電用変電所には、年に一度『命日』と呼ばれる日がある。(具体名は伏せるが実在する変電所)
その日は停電などの緊急事態がない限り、作業は禁止されている。
なぜかといえば、その命日には死亡事故が何度も起きているからだ。
しかも、どの事故も『本来の作業場所ではない所に入り込んで死んでいる』という、奇妙なものばかり。
事故の内容は、通信回線の工事に行ったのに高圧変電器に触れて感電死したり、工事監督の準備ための現地調査に行ったのに工事区画以外の階段から落ちて滑落死したり・・・。
いつからその命日があるのかは分からない。
そもそも、誰の命日なのかすら分からない。
古参の社員で事情を知っている人はいるそうだが、決して教えてもらえないという。
ちなみに下請けの人が言っていた事は、自分しかいないのにエレベーターが勝手に違う階に移動していた、という事を何度も経験したとか。
その地下変電所は今でも現役で、『命日』による作業中止も未だに続いている。
(終)