お宮参りを翌日に控えた赤ちゃんが
これは、姉の家に泊まった時の話。
次の日が姉の初めての子供、将君のお宮参りだった。※お宮参り=赤ちゃんの健やかな成長や長寿を祈る行事で一般的には生後1ヵ月で行われる
俺は仕事で遅くなったので、姉の家に着いたのが23時頃だったと思う。
もうすっかり寝てしまっていたから悪いなと思って、俺もすぐに床に就いた。
そして夜中に尿意で起きてトイレに向かうと、そこに何かいる。
最初は猫かな?と思ったが、そこにいたのは将君だった。
俺は思わず「オシッコがしたいの?」と聞いた。
そしたら「うん」と言う。
なのでオムツを外してオシッコをさせた。
用が終わると姉の部屋に将君を連れていき、布団に入れた。
ただ、俺も自分の布団に入った時に「…ん?」となった。
確かに多少は眠気眼だったが、意識ははっきりしていた。
その違和感に気づいた時、少し怖くなってきた。
そうこう考えているうちに、俺の部屋の扉を擦る音がし始める。
そして小さな声で「あけてよ」、「あそぼうよ」と言う声がする。
当然、俺はパニックに。
トイレに行った時、もう少し冷静だったらちゃんと考えられた。
翌日にお宮参りする赤ちゃんが立てるわけがない、喋れるわけがない、と。
しばらくガサガサという音や小さな声は続いたが、「また明日ね」と言うと、「やくそくだよ」と返事がしたのを最後に、声も音も止んだ。
結局、俺は朝6時頃に逃げるように「急に仕事が入ってさあ…」と言って出て行ってしまった。
それきり姉の家には今のところ行っていない。
(終)