10年経っても鮮明に覚えている夢

迫る手

 

これは、夢にまつわる不思議な体験をした話。

 

『夢』といういうものは大概、見ている最中はまるでそれが現実のように感じられて、目が覚めた瞬間は内容を鮮明に覚えているのに、起きて顔でも洗っているうちに頭に霧でも掛かったみたいにそれがどんな夢だったかを忘れてしまう、そんなものだと思う。

 

俺が普段見る夢も大抵そういった感じだが、昔に見た夢で、その内容の隅々まで克明に覚えているものがある

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夢の中で助けてくれた人

それは、俺が小学1~2年生くらいの頃に見た夢だった。

 

当時小学生の俺は、壁一面に変な象形文字のようなものが書かれた古代エジプトの遺跡の中で、無機的な表情のマネキン風のお化けに追いかけられていた。

 

ちなみに、同年代の人には分かると思うが、寝る前に読んでいた某カードゲーム漫画の影響を多大に受けている。

 

そこまではいつも見るようなありふれた怖い夢だったが、マネキンお化けから逃げるうちに、ふと俺はそれが夢であることに気づいた。

 

何かきっかけがあったわけでもないが、何故か「あ、これ夢だ」と分かった。

 

自分が夢を見ていると気づいた瞬間、いつのまにか俺は古代エジプトの遺跡ではなく、背丈と同じくらいの高さの草が生えた土手のような場所にいた。

 

そして不思議なことに、まだ何かに追いかけられているという実感があった。

 

もうマネキンお化けの姿は見えないが、逃げなくてはいけないという気持ちに駆られた俺は、それが夢だと分かっていながらも何となく怖くて、草をかき分けながら走り続けた。

 

そして走って逃げいている途中で、何人かの大人が立っていた。

 

もちろん俺は助けを求めるために話しかけたが、そこに立っていた大人は皆、顔がムンクの叫びのような、とても人間とは思えない形相をしていた。

 

俺は走りながら懲りずに何度も出会う大人の顔を覗き込むが、揃いも揃ってムンクの叫び状態。

 

そうして逃げているうちに俺はなんとなく、この夢はこのままずっと覚めることがないんじゃないか?という嫌な予感がしてきた。

 

それに気づいた時は本当に怖くなり、誰でもいいから助けて、と泣きながら立ち止まってしまった。

 

するとそこで、後ろから俺の肩にポンと手が置かれた。

 

「ヤバイ、捕まった・・・」

 

そう思った俺は怯えながらも、反射的に後ろを振り向いた。

 

だけど、その手は俺のことを追いかけていたモノではなかった。

 

後ろに立っていたのは、一人のお婆ちゃんだった。

 

しかもその顔は、他の大人達のようなムンクの叫び状態ではなくて、とても穏やかな表情をしていた。

 

「え?誰?」

 

そう思った次の瞬間、俺は自分のベッドの上で目が覚めた。

 

なぜ前置きとして昔の夢の話をしているのか、それには理由がある。

 

今は大学生で一人暮らしをしているが、つい先月の末頃、ひいお爺ちゃんが亡くなり、その葬式に出席するため地元に帰った。

 

ひいお爺ちゃんは天寿を全うして静かに往生したそうで、お通夜も物悲しい雰囲気は全然なく、親戚が集まった食事会のような感じだった。

 

そんな時、お婆ちゃん(ひいお爺ちゃんの娘)が、ひいお爺ちゃんの写っているアルバムを持ってきて、一同で思い出話が始まったのだが、そこにあった一枚の集合写真を見た途端、俺はギョッとした。

 

写真に写っている一人に、まさに俺の夢に登場したあのお婆ちゃんがいたのだ。

 

聞いてみるとその人は、ひいお爺ちゃんの妹で、20年くらい前に病気で亡くなったという。

 

写真が撮られたのは26年前で、まだ俺は生まれていない。

 

俺はその日、写真で初めてそのお婆ちゃんの存在を知ったはずなのに、俺が小学生の頃に見た夢のお婆ちゃんと間違いなく同じ人だった。

 

よく聞いてみると、そのお婆ちゃんは俺が生まれたばかりで首も据わらない頃に一度だけ我が家に来て、俺を抱っこしてくれたことがあるらしい。(もちろん俺は覚えていない)

 

今思えば、きっと親戚のよしみでお婆ちゃんが俺のことを助けてくれたのかな、と思う。

 

あの夢を見てから10年以上経った今でも、お婆ちゃんの顔を鮮明に覚えている。

 

そもそも、なんだか忘れてはいけないような気がしていたのだが、不思議なことってあるんだなと思っている。

 

そしてあの夢の中で、お婆ちゃんが俺のことを助けてくれなかったら一体どうなっていたんだろうと思うと、今でもどうしようもなくゾッとする。

 

(終)

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