精神障害で満足に喋れなかったクラスメート
これは、俺が小学2年生の時に転校してきた男の子の話。
名前は『まこっちゃん』。※仮名
まこっちゃんは精神に障害があり、満足に喋れなかった。
体は大きくて、当時はなかなか見なかった赤い髪の毛をしていた。
意思疎通ができるようになる
まこっちゃんは授業中でもどんな時でも暴れた。
いつも女の子が髪を引っぱられたりして泣かされていた覚えがある。
そうしてまこっちゃんの周りには誰も近寄らなくなった。
秋の運動会でのこと、俺はまこっちゃんと二人三脚をやることになった。
本当は嫌だったが、一緒に練習した。
まこっちゃんは体が強くて、俺はいつも引きずられた。
俺はいつもまこっちゃんに怒った。
「痛いよバカ!」と悪口を言いまくった。
何日かそんな日を過ごしていると、不思議とまこっちゃんと意思疎通ができるようになっていた。
それからは仲良くなったわけではないが、まこっちゃんが粗相をしたりすると一緒に家へ連れて帰ったりしていた。
いつの間にか俺は、まこっちゃんが『あっちに行きたい』とか『あれがしたい、これがしたい』ということが不思議と分かるようになっていた。
ある日、まこっちゃんを家に送っていくと、まこっちゃんのお母さんに家の中へ招かれた。
おいしいケーキをもらって、お茶を飲んだと思う。
そして、まこっちゃんのお母さんが突然、俺にこんなことを言った。
「あなたにはウチのホシの言葉が分かるのね@♪~¥$」
後半は何を言っているのか分からなかった。
「パピプペポ」みたいな感じに聞こえたが、今となってはよく分からないし、それ以来お母さんとは会っていない。
そして学年の終わりに、まこっちゃんは転校することになった。
最後の日も俺は、まこっちゃんを家に送っていった。
玄関先でキリっとした表情のまこっちゃんが別れ際に、「ありがとう。またどこかで会えたらいいね」と言ったと思う。
俺は家に帰ってから、『あ、まこっちゃん普通に喋れるんじゃん』と気づいた。
今思えばなんだか怖い。
(終)