机の上には『亡くなりました』のサイン
これは、現国の先生が授業の空き時間に聞かせてくれた話。
その日の朝、先生(当時14歳)が教室に入ると、友人の田中君の机の上には花瓶が置かれ、花が生けてあった。
俗に言う、『亡くなりました』のサインだ。
後味が悪い本当の理由
当時、そういったイジメが流行っていた時世でもあり、加えて田中君は死んでいるはずもない。
たった今、先生と一緒に登校してきたのだから。
激怒した先生と田中君は花瓶をゴミ箱に放り投げ、花を踏みにじり、怒声をあげて犯人探しを始めた。
10分ばかりが過ぎ、ちらほら増えてきたクラスメート達も状況に戸惑うばかりで、教室は混乱する一方。
そこに担任教師が入ってきて、こう言った。
「えー、とても悲しいお知らせがあります。席に着いてください。工藤さんが交通事故に巻き込まれて今朝方亡くなられました」
先生と田中君は一瞬、担任教師が何を言っているのか理解できなかった。
あの花は工藤さんに捧げられたものだった。
工藤さんの席は田中君の一つ前である。
つまり、担任教師が机を間違えたのだ。
では何故、みんな工藤さんが死んだ事を知らなかったのか?
実は、田中君が連絡網を回し忘れていたのであった。
そんなことは露とも知らず、担任教師は気が付いたようにこう言った。
「ここに置いてあった花はどこですか?」
ちなみに花は、工藤さんが育てていたクラスの花壇から一輪失敬したものであった。
私はこの話を聞いた時よりも、その後の「でもねぇ、工藤さんが死んだ本当の理由って自殺だったんだってさ。塾で『お葬式イジメ』をやられたんだってよ」という余談を聞いた時の方が後味が悪かった。
(終)