亡き息子の愛したバイクに語り続ける母
これは、もう20年以上も前から現在まで続いている話。
型式GSX250FWのバイクに乗っていた友人が心不全で死んだ。
母子家庭だった彼の母親は、息子の大事にしていたバイクを処分せず、まるで息子の様にバイクに語りかけている。
もう夢に出るのはやめて欲しい
そのバイクは20数年が経った今でも健在。
まるで息子の魂が乗り移ったかの如く、新車同様にピカピカだ。
何のことはない。
息子の友人だった俺たちが時折、整備と洗車をしているからだ。
それよりも、彼の母親の最近の健康状態がよくないのが心配。
ちなみに、彼のバイクの維持を熱心に続けているのが俺を含めた友人らが3人。
他にも、途中参加の助っ人が数名。
そして不思議なことに、彼のバイクの整備をした晩に必ず誰かが彼の夢を見る。
20数年間、年に1~2回、すでに50回以上の全ての晩に。
助っ人は生前の彼とは面識がないにも関わらず・・・。
ただ、それは悪い夢ではなくて、ツーリングや日常の内容がほとんどだ。
理由は分からないが、彼から感謝される夢もある。
整備仲間は全員がバイク乗りの現役だが、皆そこそこの高齢にも関わらず事故がない。
何とはなしに、彼が守ってくれている様な気にもなる。
でも、もう夢に出るのはやめて欲しいと思っている。
そんな笑顔で現れて欲しくないのだ。
彼の愛車の維持も、いつまで出来るか分からない。
ましてや彼の母親の面倒をみることなんて、到底誰も出来やしない。
最近は、彼の笑顔が怨みに変わる日が来るのでは・・・と、自分の中で不安が少しずつ広がり始めている。
(終)