左右に揺れる何かが視界に入った時

ガチャピンとムック

 

これは、姉が今の旦那さんと同棲中に体験した話です。

 

姉は何年か前に、京都市内にあるマンションに旦那さんと住んでいました。

 

当時の旦那さんは朝早い仕事をしており、毎朝5時には家を出ていたそうです。

 

姉はいつも慌ただしく旦那さんに弁当を作り、朝ご飯を食べさせてから旦那さんを送り出していました。

 

姉自身も朝から仕事があったので、出勤時間の8時まで仮眠を取るのが日課だったそうです。

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「来よったか・・・」

あの日、いつものように旦那さんを送り出し、仮眠しようとテレビをつけたまま鼻の辺りまで布団を被ってウトウトしていると、ふと視界に左右に揺れる何かが目に入りました。

 

普段から霊感のある姉は、直感的に「ヤバイ」と感じたそうです。

 

その嫌な予感を感じた瞬間、金縛りに遭ってしまいました。

 

「来よったか・・・」

 

姉は心の中で呟きました。

 

恐怖というよりも、めんどくさい感情が先に立った姉。

 

「さっさと正体を見せて帰れ」という気持ちで、少し恐怖心もあったようですが、その左右に揺れる何かを見たそうです。

 

姉が見たそれは、短パンに白いランニングシャツ姿の、坊主頭で肌は紫がかった土色の12歳くらいの少年が、首を左右に揺らしながら正座でテレビを不思議そうに見ていました。

 

第2次世界大戦時の資料でよく見るような子供だったそうです。

 

普段から霊感のある姉でも、カーテンの隙間の日光に照らされた霊を見るのは初めてだったらしく、カタカタと震えながら少年が消えるのを待っていたそうです。

 

「消えてや。お願い」

 

そう心で念じた瞬間、その少年が左右に揺らしていた首を姉の方に向け、正座のままズリズリと、ゆっくり姉の布団に近づいて来ました。

 

「ちょっと・・・勘弁して」

 

そう思った姉は目を瞑ろうとしましたが、何故か瞑れなかったそうです。

 

そして、とうとうその少年は姉が寝ている布団の横まで来て、掛け布団を引っ張り始めました。

 

姉は心の中で何度もお経を唱えたそうですが、掛け布団を引っ張る手は止まらず、終には「なぁなぁ、なぁなぁ」と少年は喋りかけてきたのです。

 

「うるさい。黙れや!」と声に出そうとしましたが、喉がカラカラで声が出ません。

 

「なぁなぁ、なあって」

 

少年の声は段々と強さを増し、部屋の中に響き渡る程になり、姉はなんとか目を瞑ってカタカタと震えていました。

 

目を瞑ってしまうと、さらに少年の声が大きくなり、耳の横にスピーカーでもあるのではないかと思うほど大きな声になりました。

 

「早く帰ってくれ!私には何も出来ひんから!他を当たってくれ!」

 

姉がそう心で叫んだ瞬間、急に少年の声は止みました。

 

「やっと、帰ってくれた・・・」

 

そう心を撫でおろし、姉は目を開けた瞬間、見てしまいました。

 

自分の体の横に添い寝するような形で、少年が寝そべっていました。

 

不思議な事に姉はこの時、恐怖というより少年に対する怒りが先だってしまい、「なんやコラ!何が言いたいねん!ワレ」と、事もあろうに幽霊に怒鳴ってしまったそうです。

 

すると、「あれ何なん?」とテレビの方に向かって少年が指を差しました。

 

姉がテレビの方に目をやると、全身緑色の前歯が出た珍獣と、全身を赤い毛で覆われて目が飛び出た怪獣のような生き物が目に入ったそうです。

 

姉が少年の方をもう一度振り向くと、もう少年は消えていたそうです。

 

そんな体験を姉は笑いながら話してくれました。

 

そして、今でも全身緑色の前歯が出た珍獣と、全身を赤い毛で覆われて目が飛び出た怪獣をテレビで見かけると、私は恐ろしくなりチャンネルを変えてしまいます。

 

(終)

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