夏休み中の学校へ肝試しに行ってみたら
これは、中学生の頃の話。
夏休み中のある日の夜中、友達らと「肝試しに行こうぜ」ということになった。
場所は通っている中学校。
学校は山奥にあり、警備センサー等はなかったと思う。
ピアノを弾く女子生徒
そうして行ってみると、校舎には工事用の足場が組まれていて、改築する旨の看板が立てられていた。
しかし、俺たち三人はお構いなしに校舎へ侵入する。
すると、どこかからピアノの音が聞こえてきた。
音楽室にピアノがあったので、そこだろうと思って移動する。
どうやら音楽室も改築らしく、工事道具などが置かれている。
恐る恐る入ってみると、誰かがピアノを弾いていた。
「おい、あれ原田じゃね?」
隣にいた柏木が言った。
そこにいたのは転校生の原田という女子だった。
原田は吹奏楽部に所属しており、背は小さくてあまり存在感はなかったが、ピアノが上手で休み時間には音楽室でよく弾いていた。
ただ、他の女子からイジメられている、という噂もあった。
原田はピアノを弾きながら、ゆっくりと首をこちらに向けた。
そして何かブツブツと言っている。
よく見ると、ピアノの蓋が閉まっている。
原田の手は、その蓋に食い込むように挟まっていた。
しかしその間も、ずっとピアノの音は鳴っている。
さらには蓋が曲に合わせて小刻みに上下していた。
ピアノの蓋はかなり重いはずなのだが・・・。
俺たち三人はそのまま動けずにその様子を見ていると、原田は「最後まで聞いてね。そしたら死んであげる」と言った。
笑顔だった。
次の瞬間、俺たちは急いでその場所から逃げた。
そして夏休みが終わって始業式の日、原田は学校に来なかった。
担任は「転校」と言っていたが、本当はどうだか分からない。
その後も音楽室は1ヶ月ほど使えなかったが、改装工事が再び行われて使えるようになった。
ただ、音楽室に置かれた新しいピアノには蓋がなかった。
(終)