山頂の廃墟別荘で肝試しのつもりが

別荘 廃墟

 

今まで生きてきた中で一番怖かった体験を話したい。

 

もう10年以上前の出来事になるが、当時の俺は都内で学生をやっていた。

 

地元はとある田舎だが、その地元には気心知れた友人が何人かいて、休みになると地元に帰っては朝まで飲んだりナンパしたりコンパしたりと楽しい時間を過ごしていた。

 

そんな夏休みの最中だった。

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人間は本当の恐怖を味わうと・・・

いつものように友人達と夜中に遊んでいて、引っ掛けた女達とカラオケをやって盛り上がっていたが、女達はカラオケが終わると「次の日バイトがあるから~」とかで帰ってしまった。

 

暇になった俺達は、誰ともなく「じゃあ、肝試しでもやんねぇ?」という話になり、山の上にある廃墟と化した別荘に行くことになった。

 

今だったら絶対に行かないが。

 

男だけで肝試しって何が楽しいやら・・・。

 

でも当時は車の免許も取ったばかりで、何をやるにも楽しかった。

 

その別荘は今では取り壊されてしまって無くなったが、地元ではかなり有名な所だったらしく、『誰それがそこで殺された』だとか『夜中に窓から女が覗いている』だとか、色んな噂が流れていた場所だった。

 

まあ、俺は特にそこで何があったのかとか全然知らなかったし、一緒に行く友人が4人もいたのでかなり余裕な感じで振舞っていた。

 

初めて行く場所だったし、怖さよりウキウキ感の方が強かったのだろう。

 

カラオケで大分時間を過ごしていたので、そこに到着したのはもう深夜0時を回っていた。

 

そして着いてビックリ・・・。

 

「なんでこんな山奥に別荘があるの?」という感じで、周りには何も無い。

 

試しに車のヘッドライトを消してみたら本当に真っ暗で、”暗黒”というのはこういうことを言うのだろうと思った程だ。

 

かなりビビってはいたが、仲間もいるし廃墟の中に入ってみることになり、皆でバリケードをブチ壊して中に。

 

中は埃とカビ臭く、割れたガラス等が散乱していて雰囲気を醸し出していた。

 

珍走団も来るらしく、”誰々参上”等とスプレーで書いてあり、そっちの方でもかなりビビっていた。

 

まあでも、俺はからっきしダメだが、友人の中には格闘技をやっている奴もいたので、かなり大人数じゃない限り襲われても平気かな、みたいな感じもあった。

 

幸い珍走団も来ず、しばらく廃屋の中で探検や何かを物色したり壊したりと、色々やって遊んでいたがしばらくすると飽きてしまい、俺達は車に戻った。

 

そして車に戻る際、運転手の友人がドアを閉めた時に肘がドアロックに当たり、偶然にも全ドアにカギが掛かった。

 

俺は助手席だったのでそれを見ていたが、後にこれが俺達を助けることになった。

 

その後はその場から離れず、エンジンをかけたまま車内で音楽を聴いたり会話を楽しんでいた。

 

しばらくすると山頂付近から光が見えた。

 

どうやら車らしい。

 

「こんな夜中に山から下りてくる車って何だよ?」

 

俺達にもちょっとした緊張が走る。

 

今まで散々不法侵入して遊び倒しているから逃げようかとも思ったが、何故かその時の車内の雰囲気が「友達同士舐められたくねぇ」みたいな感じで、誰も逃げようと言わなかった。

 

そして、あれよあれよという間に車が目の前までやって来た。

 

一本道だったので当然の成り行きだが、何故かその車はタクシーだった。

 

「今の時間に山頂で何を?」

「こんな山奥に何故タクシー?」

 

そう俺達は思った。

 

そのタクシーは俺達の車の数十メートル後ろで停車すると、後部座席から二人を降ろし、そのまま俺達の車を追い抜いて行ってしまった。

 

人が降りたので、「やべぇ、ここの別荘の持ち主か?」と思っていると、タクシーを降りた二人はしばらく俺達の方を見た後、ゆっくりとこちらに向かって来る。

 

しかも、一人は女らしい。

 

真っ赤なワンピースを着ている。

 

もう一人は明らかに男でスーツ姿だった。

 

年齢は全く分からないが40前後と感じた。

 

顔も暗くて良く見えない。

 

俺達は微妙に非現実的な出来事に、呆気に取られていたと思う。

 

そんな俺達をよそに二人は車に近付き、男が運転席側、そして女が助手席側に回り込むや、いきなりドアを引っ張りだし、物凄い勢いで俺達の乗る車の中に進入しようとしてきた。

 

「ヤバイ!!!」

 

先に述べた通り、偶然カギが掛かっていた為にドアは開かない。

 

でも彼ら二人はそんなのもお構いなしに、ドアを半端ないくらいガチャガチャとやっている。

 

ビビるしか出来ない俺達。

 

車も凄い勢いで揺れている。

 

正気に戻った誰かが「逃げろ!!」と叫ぶと、運転手の友人はすぐさま車を発進させた。

 

「うぉー!怖ぇー!!」

・・・・・・

・・・・・・

 

車の中は大騒ぎ。

 

気が付くと、皆が恐怖のあまり泣いていた。

 

近くのファミレスに車を止め、皆で「なんだったんだ、アレ?」みたいな事をギャーギャーと話した。

 

「一番涙目になってた奴は誰だ?」

「俺じゃねぇよ!」

「お前が一番涙目だったわ」

・・・・・・

 

俺は友人達がバカで明るい奴らで助かったと思った。

 

大分落ち着いてから格闘技経験者でイケイケの友人に、「なんでお前出て行かなかったの?」と訊いてみた。

 

こいつはかなり気性が激しい奴なので皆が不思議がったのだ。

 

ちなみにこいつが運転手。

 

そいつはドリンクを飲みながら一言。

 

「たぶん俺じゃ勝てないから・・・」

 

「おぉ?いつも自信満々なのに今回はえらく控え目だねぇ」

 

誰かが茶化す。

 

するとそいつはムキになり、「あのさ、俺の車1トン以上あるんだよ?ドア引っ張るだけでなんであんなに車が揺れるんだよ。あいつら力半端ねぇよ。・・・つか、お前らあいつらの顔、見てねぇのかよ?目がな、ヤバ過ぎてとても出て行けねぇって。だって黒目しかねぇんだもん。アレ、絶対人間じゃないよ

 

男女の顔を良く見ていない俺達は、その言葉にガツンと落とされた。

 

彼は嘘を言うタイプの人間ではない。

 

そうしてファミレスで朝まで過ごした。

 

今だから言えるが、あの時に俺は涙は出なかったが小便が少し出ていた。

 

人間は本当の恐怖を味わうと、小便を漏らすことをその時に初めて知った。

 

(終)

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