どの方角に動かしても同じ人が見える望遠鏡
これは、『望遠鏡』にまつわる怖い話。
10年以上前になるが、父の兄は『開運!なんでも鑑定団』というテレビ番組に出演したことがある。
なにせ田舎なもので、「伯父がテレビに出る!」と家族みんなでテレビにかじりついていた。
鑑定してもらったものは、望遠鏡。
親戚が海軍にいて、それはその時の艦隊にあった大きな望遠鏡。
ただ残念ながら、レンズは曇っていて見えなくなっていた。
結果はもちろん本物で、6桁前半の値段と鑑定された。
その時の鑑定士さんからは、「綺麗に掃除をして見えるようになればもっと値段は高くなる」と言われていた。
なので、ふと父に「掃除してから出したら良かったのにね」と言うと、「あれは昔は見えてたよ」と返ってきた。
もちろん伯父も一緒に見ていたらしい。
父は続けてこうも言った。
「俺が子どもの時はかなり遠くまで見えてたけど、時々どの方角に動かしても同じ人が見えるから気味悪くて見なくなったよ。だから伯父も掃除せずに出したんじゃないか?」と。
深くは聞けなかったが、踊っているような人が確かにいた、と父は言っていた。
もっとちゃんと聞いておけばよかった。
(終)