ゴキブリの恩返し!?
これは、大学時代の一人暮らし中での話。
当時、夜は部屋で焼酎をかっくらってから寝る、という生活をしていた。
夏のある夜のこと、床に目をやると“1匹のゴキブリの子供”がうろついていた。
なんとなく「水でも飲むか?」と、そのゴキブリの目前に水割り用の水を垂らしてやると、そいつは近づいて水を飲んだ。
時は流れ、その年の12月の夜、俺は相変わらず焼酎を飲んでいた。
さて寝るか・・・と布団に目をやると、1匹の大きな成虫ゴキブリが布団の上に居た。
「こんな季節にゴキブリ?」と思いつつ、居られて気分のいい客ではない。
・・・かといって殺すのもあれなので、誘導して退場してもらうことにした。
俺はゴキブリに近づいた。
普通のゴキブリなら、あらぬ方向へ隠れるだろう。
だが、ヤツは俺の足並みに沿って玄関へ逃げてゆく。
その時、玄関近くの台所からガス臭がした。
お湯割り用の湯を作った際、俺は酔っていたせいでコンロのスイッチをONにしたままガス栓を閉め忘れていたらしい。
栓を閉め、換気をして落ち着いた時、あのゴキブリはもうどこにも居なかった。
偶然なのか、ゴキブリの恩返しなのか、どちらにしろ大事に至らず助かった。
(終)