実家に棲んでいたであろう幽霊の田中さん
これは、私の実家に棲んでいたであろう幽霊の話。
実家は2階建ての一軒家。
2階でよく不可解な物音がしたり、誰かが部屋に入っていくのが見えたのに行ってみたら誰もいなかった、なんてことがよくあった。
家族の中では「何かいるんだろうなぁ」となっていた。
そんな時、幽霊だと思っていると怖いので、『田中さん』という名前を付けて親しみを持とうとした。
「なんか変な音する」
「田中さんじゃない?」
そんな風に。
不思議なことに、「ああ、田中さんならいいか」と思えてくる。
私は大学進学を機に実家を出て一人暮らしをしていたが、帰省した時に「田中さん最近どう?」と親に聞いてみると、「いなくなった」と言われた。
当時、実家では犬を5匹も飼い始めていて、田中さんは絶対に犬がうるさいのが嫌になって出て行ったんだ、と私は思った。
親には「田中さんの気持ちも考えてよ!」と言った憶えがある。
ただ、帰省中に自分の部屋で寝ていると、毎晩のように金縛りにあう。
俗に金縛りというのは霊的なものもあるのだろうが、私自身に起きているのは体の疲れのせいだと思っていた。
でも毎晩はさすがにおかしいなと思って家族に相談してみると、「あんたの部屋、普段は物置になってて犬が入らないから、もしかして田中さんが避難してるんじゃない?」と言われた。
思わず私は、「ああ、そうなのかも。まぁ田中さんならいいか」と。
以降、帰省の度に金縛りに苦しめられていたのに、今年の正月から全くなくなった。
本当に田中さんがいなくなったんだと思い、少し寂しくなった。
それでふと気づいたことがあり、帰省するといつも必ず左目が腫れていた。
もともと私は肌が強くないので、環境の変化で腫れていたとずっと思っていたが、田中さんがいなくなった途端にその腫れる症状がなくなった。
今年のお盆に実家へ帰った時も、金縛りや左目の腫れ、不可解な物音なども何もなかった。
あとがき
もし目が腫れていたのが田中さんの影響だったとすれば、それまで親しんでいた田中さんのことがなんだか急に怖くなった。
実害があったのか・・・。
ちなみに、実家はじいちゃんが土地を買って一から建てた家なので、前に住んでいた人がいたとかもなく、地鎮祭もちゃんとやっている。
それなら、田中さんは一体何者なんだ?
どこから来たの?
それに、なぜ2階にしか出てこなかったの?
考えれば考えるほど、いなくなった田中さんが怖い。
最後に余談になるが、『女の霊は左に、男の霊は右に祟る』と言われている。
・・・ということは、田中さんは女性だった?
(終)