幽霊はいるもん。いるから!
これは、10年くらい前にあった話。
ある時に友人のヨシカズと、“幽霊がいるかいないか”で喧嘩になった。※名前は仮名
どうやらヨシカズのお母さんが幽霊を見たらしく、そこからいるいないの口論に発展したのだ。
口論の末、地元では『必ず見える』と言われている噂の廃墟へ行くことに。
自己主張をする女幽霊
廃墟の雰囲気は怖いが、幽霊なんていないと思い込んでいる俺は、ヨシカズに「幽霊さんまだぁ~」やら「いるわけねぇ~じゃん」と馬鹿にしながら進む。
やはり雰囲気がそれらしいだけで、どれだけ時間が経っても何も現れないし、異変もない。
結局は何も出ず見えないままにお開きに。
しかしその夜、寝ている時に生まれて初めての金縛りに遭った。
俺は、「体が疲れているけど脳だけが覚醒しているから金縛りになるんだ」と、何故か冷静に判断していた。
すると、遂に現れた。
目だけを動かすと、枕元に女がいるのは分かるのだが、顔や服装や全体のシルエットが何故かぼやけている。
まるで人影だけが立っているようだった。
そしてその人影がブツブツと何かを呟いているが、よく聞こえない。
もしかしてこの世に残した怨み事か?と思っていると、その呟きがはっきりと聞こえ始めてきた。
「・・・・・・る」
「いるもん・・・・」
「幽霊はいるもん。いるから!」
女の幽霊と思しきその人影は、ひたすら自己主張だけをしていた。
あれから随分の年月は過ぎたが、今でも拗ねたように言うあの自己主張の声は忘れられない。
だが、あまり怖いとは思わない。
おかげで『幽霊はいる』と信じる事は出来たが、なんだか夢が壊れた気がした。
(終)