頑丈過ぎた爺さんの不思議な話
これは、十数年前に死んだ爺さんの話。
母方の爺さんは山の中に住んでいた。
道はあったけれど、隣の家まで1キロ以上。
電気は通っていたけれどガスはなく、平成の世で竃と薪のお風呂。
爺さんは元は東京生まれの結構なボンボン。
けれど、戦争で親をなくして、親戚を頼って東北の山奥に移り住んだとのこと。
そんな爺さんは凄く頑丈な人だった。
生まれて一度も病院に行ったことがなく、死ぬ時まで歯が全部揃っていた。
そんな爺さんの火葬の時に、不思議なことが起きた。
いつまで待っても火葬が終わらない。
さすがに親戚一同が係りの人に詰め寄った。
係りの人の言い分は、「いくら焼いても骨が崩れない」とのこと。
試しに火葬炉から出してみると、小学校の理科室にあるような骨格標本そのものだった。
箸でガンガン骨を突いても崩れない。
結局、喪主の叔父さんと火葬場の人の話し合いの末、奥の部屋で金槌を使って砕くことに。
そんな頑丈過ぎる爺さんから、生前に聞いた不思議な話がある。
「ワシは若い時に大きな鹿を助けたことがある。あれは山の神様でな、御礼にワシを丈夫にしてくれた」と。
聞いた当時はフーンぐらいに思っていたけれど、今にして思えば何となく信じられる気分になる。
(終)