もしかしたらまだ乗っていたりして
これは、『幽霊』と思しき人と遭遇した時の話。
その昔、電車に乗ってくる幽霊のような人を見たことがある。
電車が駅に到着して扉が開くと、おばさんが乗ってきた。
目が一瞬合ったので、私は「こっちに来たから隣に座るかな?」と思い、自分のスカートが座席に広がっていないかチラッと確認して、顔を上げた。
すると、おばさんはいなかった。
移動したり出て行ったとしても、あまりに素早すぎる。
目を離す前には、もう私とおばさんの距離は1メートルあるかないかだった。
腑に落ちなかったけれど次の駅で下車するつもりだったので、悶々としたまま電車から降りた。
下車する寸前、なんとなく振り返って車内をチラッと見てみた。
すると、さっきまで私が座っていた隣くらいの位置、その背後辺りの窓に、おばさんが満面の笑顔で映っていた。
低い位置だったので、「やっぱり座っていたのかな?」と思った。
ただ、窓の方を振り返っていたにしては、首が180度回っていないとおかしいような映り方だったけれど・・・。
もう10年程前の出来事だけれど、明日またそこへ行く予定。
その路線は環状線なので、もしかしたらまだ乗っていたりして、おばさん。
(終)