半開きの戸の向こうに見たもの
俺の住んでいる地域は、大戦中に空襲がひどかったらしい。
今でもあちらこちらに防空壕が残っており、小高い場所にある俺の家の下にも二つある。
俺は霊感があるかといえば、うっすらとある。
そんな見える人ではない俺でも、あまり家の下はいい感じはしない。
ここには5年くらい前に引っ越して来たのだが、思っていた通り、そういう類のものがたまに出るようだ。
よく出るのは子供で、男女いる。
他に見たのは成人の女が一人。
怖いのは正直苦手だから、見るたびに泣きそうになる。
そしてつい最近、死ぬ程怖い体験をした。
家に一人で居た時だった。
さあ寝ようと思った時、ふと風呂場入口の引き戸が半開きになっていることに気づいた。
なんとなく気になり、閉めようと戸に近づいて中が見えたら『男の子』がいた。
しかも、普通の子供ではない。
肌が真っ黒だった。
汚れて黒くなっているのではなく、焼け焦げたように。
男の子は正座で、体は微動だにしていないのに顔だけがクルクルと回っていた。
無表情の顔がクルクルと。
いい歳して情けないが、半泣きのまま走って家から出て、そのまま近くのコンビニに逃げ込んだ。
空が明るくなり始めた頃、ようやく気持ちが落ち着いてきたので家に帰った。
家の中には誰もいなかった。
安心はしたが、今でも怖い。
あの男の子は何だったのか。
今はどこにいるのか…。
(終)