深夜の火葬場で肝試しのはずが 1/2

 

俺が17歳の頃、

実際に経験した話。

 

当時、ほぼ常に一緒にいた

Sって奴がいて、

 

そいつが色々な怪談だとか

心霊スポットだとかが好きだったんです。

 

俺も昔は見えなかったものが

見えたりするようになって、

 

面白がっていました。

 

(ぼや~っと人魂程度にですが・・・)

 

やっぱり知識がないといけないですね、

面白がっちゃいけなかった・・・。

 

夏休み中の深夜2時前。

 

いつものように夜中まで

遊んでいた俺たちは、

 

ちょっと離れた火葬場に肝試しを

しに行くことになったんです。

 

もちろん、

言い出しっぺはS。

 

二人で行っても面白くないので、

電話でAとYを呼び出しました。

 

怖がる二人を連れて、

 

大きな道をまっすぐ

自転車2台で走りました。

 

(二人乗り×2です)

 

火葬場が近くなってきて、

 

夏だというのに空気がどんよりと

重く冷たくなった気がしました。

 

そして火葬場に到着。

 

でも実際は中に入る事は出来なくて・・・

当然ながら鍵がかかっていたんです。

 

仕方ないからここで怪談でもして

気分を盛り上げようか?

 

とSが言い出したので、

 

みんなで火葬場の敷地内で輪になり、

怪談を始めました。

 

怪談話をしていた最中の事です。

 

Sがお清め用にと持ってきた塩のビンを、

振りながら話をしていたんです。

 

みんなを驚かせ・・・「わ~!」とか、

そういう怪談あるじゃないですか。

 

その、「わ~!」の瞬間に、

 

腕を振り上げて塩をぶちまけて

しまったんです。

 

Sはちょうど俺の対面で、

 

俺以外の全員が頭から塩を被って

文句を言っていました。

 

その時の俺はというと、

 

ざまーみろ、日頃の行いだよ、

と能天気に笑っていたんです。

 

時計の針が3時に近づいてきた頃、

 

そろそろやめて帰ろうか、

という話になりました。

 

んじゃぼちぼち・・・と立ち上がり、

正面を見た瞬間!

 

ガラスに映ったんです。

 

足の無い男の子が、

麦藁帽子に虫取り網を持って・・・。

 

Sが俺の様子の変化に

気付きました。

 

俺は膝をガタガタ震わせ、

言葉を発することすら出来ませんでした。

 

(ハッキリ見たのは初めてだった)

 

瞬時、

Sは自分の後ろを振り返り、

 

「やっと出たのか」

 

と言いました。

 

Sは突然、

様子を見てくると言い、

 

ガラスの方向へ向かって

歩いていきました。

 

AとYは、俺と一緒に

立ち竦んでいました。

 

そしてしばらくして・・・

Sが俺たちを呼びました。

 

俺はYに肩を借りて

ゆっくり立ち上がり、

 

Sの方へ歩いていきました。

 

「あのな、

この先が火葬場みたいなんだ」

 

とSは言いました。

 

つまり、

 

この草むらを越えたところに、

荼毘(だび)に伏せる機械がある、と・・・。

 

確かに、草むらの奥の方には

銀色の物体が見えました。

 

(学校にある焼却炉の大きい物のような・・・)

 

間違いない、

俺たちは確信しました。

 

さっきの俺が見た少年といい、

Sが感じている鳥肌といい、

 

間違いなくいる・・・。

 

全員がそう感じていました。

 

「じゃ、行ってくる」

 

Sはそう言うと、

 

草むらの中にズカズカと

入っていきました。

 

奴の心臓はもう毛しか見えないんじゃ

ないのでしょうか・・・。

 

そんな事を考えていると、

突然Sが叫びました。

 

「やめろ!離せ!」

 

そしてSは物凄いスピードで

引き返してきて、

 

「帰るぞっ!」

 

と言うと、

自転車に向かって走りました。

 

俺も、腰を抜かしている

場合ではありません。

 

猛スピードで自転車まで駆け寄り、

後ろにYを乗せて急発進。

 

全力で漕いで、

明るい大通りまで走りました。

 

そして、

 

さっきまで晴れていたはずなのに

突然の大雨が・・・。

 

間違いなく通り雨なのですが、

 

先ほどの出来事からも

不気味で仕方ありません。

 

帰路でYが後ろから肩を叩いてきて

俺を怖がらせて楽しんでいましたが、

 

2回3回としつこいので

無視していました。

 

そして地元に帰ってくると、

 

暖かいものが欲しくなり、

コンビニへ入る事にしました。

 

まぁ、濡れた全身にクーラーは

痛かったですが・・・。

 

「しかしなぁ・・・Y、

 

何度肩を叩いても効果がないって

何で分からないかなぁ?(笑)

 

俺が笑いながら言うとYは、

 

「え・・・?俺、2回しか

叩いてないよ?」

 

と言いました。

 

おかしいです。

 

俺の肩は3回叩かれているんです。

 

きっとパニックでおかしくなったんだよ、

と慰められ、

 

みんなでYの家に向かう事に。

 

道中、俺はパニックなんかじゃない

と思っていました。

 

だって、肩を叩かれたのは

大通りに出た後・・・。

 

つまり、

俺は既に落ち着いていたのですから。

 

(続く)深夜の火葬場で肝試しのはずが 2/2

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