忍び寄る、あるモノからの報復

 

ある家族の話をしよう。

 

大学一回生の時に知り合ったAが

後期の終わりの冬頃、

 

俺に聞かせてくれた話だ。

 

話はAの中学時代。

 

家族構成は父、母、A、妹の

四人家族。

 

真面目なサラリーマンの父に、

内職で家計を助ける母。

 

そして中学生だったAと、

小学生の妹。

 

喧嘩や家庭不和は一切無く、

絵に描いた様な一般家庭だったらしい。

 

ある時、

 

父が息を切らせながら

帰って来た。

 

「誰かに追いかけられた!」

 

と言う。

 

Aは染みの付いた年代モノの

金属バットを持って、

 

玄関から外を窺った。

 

しかし、誰もいない。

 

父に「いないよ」と言っても、

 

「そんなはずない!

外まで確認して来い!」

 

と怯えている。

 

ウチの親父はあんなに頼りなかったのか

とショックを受けつつも、

 

Aは外を確認したが、

やはり誰もいない。

 

家に戻ると、

 

父は普段飲まない酒を煽り、

ふて寝をしていた。

 

Aは溜息をついた。

 

次の日、

 

また父は走って家に

飛び込んで来た。

 

Aはまたバットを持って見回り、

また溜息をついた。

 

一週間それが繰り返され、

ついに父は爆発した。

 

家の中の家具を根こそぎ引っくり返し、

Aの妹を怯えさせた。

 

母とAは何をするでも無しに、

呆けたようにそれを見ていた。

 

次の日、

 

Aは父の帰宅を家の近くの空き地の

草むらに隠れて見張った。

 

手には金属バット。

 

隠れて10分後、

 

父が走って空き地の前を

通っていった。

 

Aは飛び出し、

 

たった今、父が走ってきた道を

睨み付けた。

 

妙な影がいた。

 

そいつは四ん這いで

ペタンペタンと跳ねながら、

 

ゆっくりとAに迫って来た。

 

Aは叫びながら、

 

バットをそいつの背中目掛けて

力いっぱい振り下ろした。

 

バットはそいつの弾力に、

あっさりと跳ね返された。

 

Aは唖然となって、

そいつとバットを交互に見比べた。

 

その時、

初めてその影を正視した。

 

ただのカエルだった。

 

ただし、

大きさは1メートルはあった。

 

カエルは丸い目をギョロつかせて

Aを見ると、

 

喉を鳴らした。

 

Aは逃げて、

 

一度後ろを振り返り、

バットを投げ付け、

 

また逃げた。

 

そして家族に全て話した。

 

「見てみたい」

 

と玄関に行きかけた妹を、

父が殴った。

 

Aと母は驚いて父を見た。

 

父は怯えきっていた。

 

母は泣く妹を宥めながら

隣の部屋へ行き、

 

Aは父に酔いが回るのを待った。

 

「確かに殺したよ、カエル。

・・・・・・沢山な」

 

神社の近くの人気の無い沼。

 

父の子供時代の遊び場。

 

遊びの定番だった、

爆竹と虫かご。

 

捕まえてはなぶり殺し、

 

虫かごに入れて持って帰っても、

結局は忘れて放置。

 

死んだら川に捨てていた。

 

「子供なら誰でもやるだろ。

俺だけじゃない!」

 

Aにはそんな遊びの記憶は無い。

 

それがAの父への絶望を

さらに深めた。

 

「親父・・・

 

多分、逃げなかったら

潰されて死ぬんだろ?

 

生命保険入ってたっけ?」

 

それを聞いた父は

Aを少し見つめると、

 

無言で疲れたように横になり、

寝入った。

 

次の日、

父は帰って来なかった。

 

代わりに、

警察が訃報を持って来た。

 

父の幼少時の遊び仲間が一人、

町の居酒屋の店主をしていた。

 

Aの父はその店主を刺し、

 

その後に自ら胸を刺して

自殺したらしい。

 

警察は喧嘩の末、

カッとなっての犯行だと断定した。

 

当時の店の客が、

言い争う二人を見ていたのだ。

 

店主は命を取り留めたが、

父は死んだ。

 

死に顔は凄惨だったという。

 

Aと母親は、

 

妹の為にも、もうこの町には

居られないと思った。

 

Aは警察からの事情聴取の帰りに、

 

死んだ父の愛車から

少量のガソリンを抜き取ると、

 

神社近くの沼に行き、

周辺にガソリンを撒いて火をつけた。

 

近所の通報で消防が来た時には、

そこにAはいなかった。

 

その後、

Aの家族は引っ越した。

 

そこまで話した後、

Aは言った。

 

「実は俺・・

 

入学金と一回生分の授業料以外の金は

大学に納めるつもりないんだ。

 

一般的で平凡な学生、

って肩書きが必要だった。

 

この前、お袋が倒れた。

 

妹も高校受験だ。

 

俺に掛けられている生命保険の額、

怪しまれるギリギリだぜ?」

 

Aは溜息をつくと、

薄く笑って話を続けた。

 

「俺が持っていた金属バット。

 

あれ、中学に入った時に

買ってもらったんだ。

 

いつ付いたのか、

妙な染みがあったんだけど。

 

カエルから逃げた翌日の朝、

バットを取りに戻った時に分かった。

 

バットに残っていたカエルの体液の色と、

その染みの色が同じだったんだ。

 

親父は言わなかったけど。

 

アイツ(親父)

毎晩あの沼に通っていたんだ。

 

俺のバットを持って、

ストレス解消に。

 

生き物の怨念は怖いぞ、

俺もそろそろだ。

 

もしお前が俺みたいになったら、

 

家族の誰にも迷惑を掛けずに

一人で死ねよ」

 

俺はその日以来、

Aには会っていない。

 

人間以外の生き物は

存外に恨み深く、

 

しかも、いつ飽和点に達するのか

分からない恐怖がある。

 

いつどこでソレが現れても・・・。

 

たとえ、たった今、

 

お前の後ろでソレが

口を開けていたとしても・・・。

 

殺してきた報いは誰にでも来る。

 

その時が来たなら、

 

口に手を当てて、

叫び声を出さぬまま、

 

誰にも迷惑をかけず、

そして死ね。

 

(終)

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