彼女の描く奇妙な絵と自分がみる奇妙な夢 1/2

美術室

 

大学時代、

半年ほど付き合った彼女がいた。

 

1つ年上で、

美術コースにいた人だった。

 

バイトが同じで知り合ったのだが、

一見すると、ごく普通の女子大生。

 

しかし、彼女が描いている絵を

何度か見せてもらったことがあるが、

 

前衛的というのか、

絵は詳しくないのでよくわからないけれど、

 

どれも『体の一部が大きい人間の絵』

だった。

 

グループ展やスケッチブックのラフ画など、

全てがそうだった。

 

たとえば半裸の外人が

正面を向いている絵があるが、

 

左目だけが顔の半分くらいの大きさで、

外にまではみ出ていた。

 

他にも足の先だけが巨大化した絵だとか、

鼻、口、肩、親指・・・

 

写実的じゃない抽象画のような作風だったが、

パっと見て吐き気を覚えたことがある。

 

そんな時の彼女は、

困ったような顔をしていた。

 

彼女と付き合い始めて、

ふとあることに気がついた。

 

子供の頃からずっと、

 

何度も何度も繰り返し見ていた夢を

見なくなっていた。

 

それは悪夢というべきなのか。

 

よくある追いかけられたりするような

脅迫的なものではなく、

 

とても静かな夢だった。

 

それは唐突にやってくる。

 

袋が見えるのだ。

 

巾着袋のような艶かしい模様をした、

大きな袋。

 

子供くらいなら隠れられそうな。

 

それまでどんな夢だったのか、

まったく関係が無い。

 

とにかく気がつくと、

 

場面は大昔に住んでいた

アパートの一室になり、

 

夕日が窓から射し込む中で、

袋がぽつんと畳の上に置いてある。

 

この夢がとてもとても恐ろしかった。

 

夢なんてものは、

奔放に目まぐるしく変わるものなのに、

 

この部屋に入り込むと、

それが凍りついたように止まる。

 

部屋には扉はどこにもなく、

ただ立ち尽くして袋と向かい合う。

 

目を反らしたいのに、

魅入られたように動けない。

 

やがて、

僅かに開いている袋の口の陰を、

 

負の期待感とでもいうもので、

じっと見つめてしまうのだ。

 

ああ、早く。

 

早く夢から覚めないと。

 

逃げ場はたったひとつしかない。

 

その部屋は、

いつも夕日が照っている。

 

それがかげり始めると、

袋の口が開いていくような気がして。

 

そんな夢だ。

 

目覚めてからは、

もうあの部屋には行きたくないと思う。

 

しかし、どんな楽しい夢でも、

 

ドアを開けるとあの部屋に

繋がってしまうことがある。

 

そして降り返ると、

ドアは無いのだ。

 

そんな夢が頻度は減っていったが、

大学に入るまで続いた。

 

よくよく考えるが、

あの袋に見覚えはない。

 

畳敷きのあの部屋も、

 

今はアパートごと

取り壊されているはずだ。

 

脈絡が無く、

意味がわからない。

 

だからこそ怖く、

 

両親にも誰にもこのことを

話したことはなかった。

 

それが彼女と付き合い始めてから、

何故か一度も見なくなった。

 

ほっとする反面、

 

長く続いたしゃっくりが止まった時のような

気持ち悪さもあった。

 

彼女にこのことを話してみようかと

思っていた頃、

 

「夜、大学の特別美術棟に

忍び込んでみない?」

 

と彼女に誘われた。

 

美術棟は夜は戸締りされて

入れなくなるのだが、

 

学生たちは独自に侵入路を持っていて、

こっそり夜の会合を開いたりしている。

 

面白そうなので、

さっそく付いて行った。

 

(続く)彼女の描く奇妙な絵と自分がみる奇妙な夢 2/2

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