夢で見た、知るはずのない部屋 2/2

突き当りの部屋

 

父は驚いた顔をした。

 

「そんなはずはない」

 

と言うのだ。

 

いや、確かにあった。

 

僕は廊下の途中にある物置部屋、

つまり、

 

問題の部屋の隣にある部屋に、

よく閉じ込められたことも思い出した。

 

イタズラしたあとの折檻だ。

 

その物置部屋には窓が無かったので、

すごく怖かった。

 

そこには仏壇があり、

よく祖母がお題目を唱えていた。

 

なむみょうほうれんげきょう・・・

なむみょうほうれんげきょう・・・

 

その時には分らなかったが、

祖母は後家、つまり、

 

祖父の先妻が亡くなったあと、

家に入った後妻だった。

 

本家と宗派が違った祖母は、

 

自分用の仏壇をそんな物置にしか

置くことを許されなかったのだ。

 

ちなみに祖母が死んだ時、

創○学会から、

 

「ウチで葬式を出したい」

 

と言ってきたので、

丁重にお断りした。

 

とにかく僕の中でその物置部屋は、

なむみょうほうれんげきょうの部屋であり、

 

窓も無い恐怖の部屋だった。

 

そんなわけで、

外から見たあの窓は問題の部屋。

 

つまり、

廊下の奥の部屋の窓のはずだった。

 

というよりも、

 

僕はあの部屋に入った記憶もあり、

中の様子も所々覚えていた。

 

そんなことを話すと、

父は強張った顔をして黙り込んだ。

 

そして伯父、

 

つまり父の兄に電話してくる、

と言って席を立った。

 

戻ってくると神妙な面持ちで、

ぽつぽつとこんな話をし始めたのだ。

 

あの部屋は30年も前に亡くなった、

先妻の部屋であったこと。

 

先妻の最後の子供が父だったこと。

 

ただし、

これは知っていた。

 

僕がおばあちゃんと呼んでいた人と、

血が繋がっていなかったことは。

 

そして驚いたことに、

 

病気がちだった先妻が

ひっそりと死んだその部屋は、

 

忌まわしいということで

完全に封印されていたというのだ。

 

その時、僕は思い出した。

 

廊下の奥には使わなくなったタンスや戸棚、

廃材などで埋め尽されていたことを。

 

あの奥に部屋があることを、

母は知らなかった。

 

確かに、

 

僕にも電球のない廊下の、

暗い行き止まりの記憶がある。

 

しかし昼間でも暗いけれど、

 

そうした粗大物もない廊下の奥に扉があり、

それを開け放った記憶もあった。

 

僕は混乱した。

 

父いわく、

 

「俺の知っている限り、

あの部屋は何十年も使われていなかった。

 

お前が生まれるずっと前だ。

 

兄貴にも聞いてみたが、

やはり間違いない。

 

ドアも打ちつけてあって、

絶対に入れなくなっていた。

 

だからお前があの部屋を

覚えているというのであれば、

 

『そんなはずはない』のだ」

 

しかし、

父はこうも言った。

 

「あの部屋でお袋は、

いつもソファーに腰掛けていた。

 

体に障るからベットに寝てろ

と言ったが、

 

俺たち兄弟が部屋に来た時は、

 

いつもあのソファーで

ニコニコ笑っていた」

 

僕はそのソファーを覚えていた。

 

僕のあの部屋の記憶はなんなのか、

結局わからずじまいだったが・・・

 

それが昨日、

 

たまたま友人と会いに街に出掛けた時、

その祖父母の家の近くを通りがかった。

 

10年近く前に取り壊されたきり、

一度も行っていない。

 

妙に気に掛かることもあり、

自転車を漕いで行ってみた。

 

すると、

辺りの風景がすっかり変わっていた。

 

家の前の道路が広くなり、

商店がたくさん進出していた。

 

そして家のあったところに着くと、

僕は全身の毛が総毛立つ思いがした。

 

跡地には、

大きなパチンコ屋が建っていた。

 

それを見ていると、

急に胸が締めつけられた。

 

僕は全部思い出した。

 

祖母は初孫を心待ちにしていたという。

 

伯父は訳があって結婚しなかったので、

 

父の子供が早く生まれることを

誰よりも願っていた。

 

自分の病気のことを、

よくわかっていたからだろう。

 

しかし父は晩婚だったので、

 

祖母は初孫である僕を見ることなく

他界してしまった。

 

そのことは子供ながらに、

祖父が話していたことを覚えている。

 

悔しかっただろうと。

 

そして、僕は思い出した。

 

そして理解した。

 

祖母があの部屋で僕で抱くことを、

切に願っていたこと。

 

その想いは多分、

あの部屋に残っていた。

 

そして祖母は招いたのだ。

 

僕を。

 

僕は思い出した。

 

昔、夜中によく寝ぼけて、

 

「おばあちゃんは?」

 

と言っては義理の祖母に、

 

「はいはい。ここにいますよ」

 

とあやされたことを。

 

僕は、

あの部屋には一度も入っていない。

 

僕は子供の頃、

あの部屋に入る夢を見たのだ。

 

祖母は僕を夢の中で、

あの部屋に招いたのだった。

 

僕は目の前の騒々しい町並みを見ながら、

ガタガタと震えた。

 

多分、祖母はまだあそこにいる。

 

家は無くなり、

家族はみんな去っても、

 

祖母はあの部屋から出られないのだ。

 

この頃の夢は、

きっとそのためだ。

 

パチンコ屋め!!

パチンコ屋め!!

 

パチンコ屋め!!!!!

 

どうしようもない自分に腹が立った。

 

せめて近いうちに、

祖母の墓参りをしようと思う。

 

(終)

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