なぁ、人肉館に行かないか? 2/3

廃墟 厨房

 

ヒンジ一つで繋がっていて、

 

※ヒンジ

扉のちょうつがいのこと。

 

今にも取れそうなドアを開けた私たちは、

奥に続く廊下に出た。

 

5メートルほど先だろうか、

 

頑丈なドアが、

行く先を阻んでいるのが見える。

 

しかもその扉は、

南京錠で固く閉ざされているようだ。

 

腕時計を見る。

 

時間はもうすぐ23時を回るところだ。

 

南京錠も付いており、

時間も深夜。

 

私はもうこの辺で引き上げたいと

考えていた。

 

しかし友人は何処で拾ってきたのか、

 

鉄で出来た棒を南京錠に挟み込み、

テコの原理で南京錠を壊そうとしている。

 

「やめろ」

 

・・・と言いかけた時だった。

 

金属が壊れるパキンという音が、

辺りに響いた。

 

私は無意識に周りを見渡す。

 

今の音で誰かがやって来るのでは

ないかとは思ってしまう。

 

友人はしてやったりとした顔を見せ、

再び私にこちらへ来いと合図をしている。

 

私は溜め息をつきながら、

友人の元へ向かった。

 

頑丈な扉の先には、

 

さらに奥に進む廊下と、

上の階へと続く階段があった。

 

今まで施錠されていた為だろうか、

 

これまで散乱していたゴミは無く、

物も壊されていない。

 

まさか焼肉屋の奥がこんなに広いと

思っていなかった我々は、

 

若干戸惑いを覚えたが、

友人は先に進もうと促してくる。

 

だが、もう夜も遅い。

 

私は友人に、

ここからは二手に別れようと提案した。

 

友人も今の時間を知ってか、

私の提案に渋々賛同した。

 

それぞれ一通り見て回った後、

またこの場所に集合することにし、

 

友人はこのまま奥の扉の先へ進み、

私は二階を見ることになった。

 

暗闇の中から階段を見上げる。

 

階段は5段ほど上ったところで、

右に折れている。

 

その先はどうなっているのだろうか。

 

誰か立っているのではないだろうか。

 

そういった思いが一歩を遅らせる。

 

ガタン!

 

思わず叫び声をあげそうになった。

 

どうやら友人が先に進んだようだ。

 

私も意を決し、

階段に足を運んだ。

 

幸いにも階段を曲がった先には

誰も居なかった。

 

階段を上ったところにはドアがあり、

私はそのドアを開けた。

 

懐中電灯で周りを照らしてみる。

 

事務机が幾つか並んでおり、

 

黒板やホワイトボードが

壁に取り付けられている。

 

どうやら何かの事務所のようだ。

 

さらに奥の壁は、

一面ガラス張りになっている。

 

私はガラスに近づき、

下を覗いてみた。

 

どうやらここから一階が、

見渡せるようだ。

 

一階はとても広い部屋で、

天井はガラス張りになっている。

 

ガラス張りのおかげで

月明かりが差し込んでおり、

 

広い部屋をなんとか見渡せることができる。

 

それにしても、かなり広い。

 

学校の体育館ほどはありそうだ。

 

目につくものといえば、

 

巨大な機械が数台と、

藁のような草が沢山落ちている。

 

また中央には円形のスペースがあり、

 

それを中心に柵で作られた囲いが

何個も作られている。

 

よく目を凝らして見ると、

 

中央の円形のスペースに何か、

四角い巨大な箱のような物が置かれている。

 

ここからではそれ以上、

見ることが出来ない。

 

私はしばらく考え、

 

この部屋が何を目的として

使われていたのか分かった。

 

恐らく、

食肉の加工でもしていたのだろう。

 

柵で作られた囲いに牛や豚を入れ育て、

真ん中のスペースで解体していたに違いない。

 

そして、捌かれた肉の一部が

料理として出されていた。

 

噂があっていれば、

きっと人もここで解体されていたのだろう・・・

 

そう考えると、

不気味さが一層強くなった。

 

そんなことを考えながら下を見ていると、

明かりがチラホラと動いているのが見えた。

 

下の階を見回っている友人だ。

 

友人は大型機械の付近を歩いている。

 

しかし、しばらく見ていると

機械の影に入ってしまい、

 

見えなくなってしまった。

 

その後、

私は今居る部屋を一通り見て回り、

 

元来た階段を降りて、

友人の帰りを廊下で待った。

 

どのくらいの時間が経ったのだろうか、

友人はまだ戻って来ない。

 

いくら広い部屋でも、

そろそろ戻って来てもいい時間である。

 

友人の身に何かよからぬことが

起きたのだろうか。

 

私は懐中電灯を再び構え、

友人が入っていったドアを開けた。

 

先ほど上から見ていたので、

 

どのような構造になっているのかは

おおまかに分かるが、

 

実際に床に足をつけて見ると、

とても広い。

 

入ってきたドアから通路が奥まで続き、

 

その行き先に上から見た

円形のスペースがあるはずだ。

 

その途中、通路を挟むように、

大型の機械が置かれている。

 

大きな声を出し友人を呼べば、

すぐに見つかるかも知れないが、

 

周りは静まり返っており、

何故か声をあげることが出来なかった。

 

仕方なく、

周りを注意しながら足を進める。

 

もしかしたら友人が何処かの影から、

私を脅かしに飛び出て来るかも知れない。

 

歩く度に足元にある藁が擦れて、

ザザッ、ザザッ、と音が鳴る。

 

入口から延びている通路を少し歩いた。

 

もうすぐ二階から見えた円形のスペースが

見えてくるはずだ。

 

思惑通り少し歩くと、

円形のスペースが見えてきた。

 

そして二階からはよく分からなかった、

四角い物体も徐々にその姿を現した。

 

歩くたびに鮮明になっていく、

四角い物体。

 

それの正体に気がつくまで、

さほど時間はかからなかった。

 

四角い物体は、

巨大な冷蔵庫だった。

 

家庭用の冷蔵庫ではなく、

業務用の大きい冷蔵庫がポツンと置いてある。

 

何故こんな場所に・・・

 

あまりに不自然である。

 

このような場所では不自然に感じるものほど、

恐怖を覚えるものは無い。

 

私は冷蔵庫に近づいてみた。

 

(続く)なぁ、人肉館に行かないか? 3/3

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