携帯電話に届いた一通のメールから
とある田舎の高校1年生の少女が、
誕生日のお祝いに
親から携帯電話を買ってもらった。
その少女はとても喜んだが、
その頃は携帯電話があまり普及していなく、
また田舎ということもあってか、
少女のまわりの友達は
誰も携帯電話を持っていなかった。
しかしある時、
その少女の携帯電話に、
一通のメールが届いた。
その内容は、
『メル友が欲しくて、
適当に番号を入れて送ってみました。
もし良かったら、
メル友になってくれませんか?』
というものだった。
その少女は喜び、
その申し出を受け入れた。
その日からその少女はそのメル友と、
毎日のようにメールをしていた。
そのメル友は男の子で、
1つ年上の高校2年生だった。
歳も近いその男の子に、
少女は次第に惹かれていった。
しかし、その男の子とは
テレビや学校の話はするものの、
どこに住んでいるのかまでは
知らなかった。
男の子はあまりそういう話を
したがらなかったのだ。
ある日、少女は意を決して、
男の子にメールで聞いてみた。
『声が聞いてみたい。
それに、
直接いろんな話をしてみたい』
というようなことを。
男の子は、しばらく間をあけた後、
『僕も直接話してみたい。
今日の夜8時頃に電話するよ』
というメールを返した。
少女はとても喜び、
どんなことを話そうかと色々考えながら、
夜の8時を待った。
そして8時を少し過ぎたところで、
男の子から電話がきた。
少女は男の子との初めての電話を
また後で聞き返したいと思い、
録音機能を使いながら会話をしていた。
男の子との会話はとても楽しく、
ふと気が付いたら9時半をまわっていた。
そして少女は、
『あ、もうこんな時間だ。
また今度話をしよう』
と、そこで会話を切った。
少女はとても楽しかったなあと、
男の子との会話を思い返していた。
・・・が、
なぜかあまりよく思い出せない。
とても楽しかったことだけは
覚えているのだけど・・・
そうこうしている内に、
初めての電話という緊張から解かれた為か、
眠くなってきてしまった。
今日はもう寝よう、と、
10時過ぎには就寝していた。
すると突然、
「あんた、何やってんの?!!」
と母親の怒鳴り声がして、
少女は目を覚ました。
少女は2階の自分の部屋の窓から
転げ落ちる寸前だった。
時計の針は2時を指している。
母親は、娘の部屋から
やたら物音が聞こえるので、
様子を見に来たのだった。
少女はなぜ自分が窓の手すりを
乗り越えようとしていたのか、
まったく分からなかった。
そこでふと、
男の子との会話が気になった。
確か、録音してたはずだ。
その会話を聞いてみた。
あんなにお喋りしていたのに、
携帯電話に残っていた会話はこれだけだった。
『お前は今夜2時に窓から落ちて死ぬ』
『お前は今夜2時に窓から落ちて死ぬ』
『お前は今夜2時に窓から落ちて死ぬ』
・・・・・・
(終)