心霊スポットからの実況メール 3/3

携帯電話

前回までの話はこちら

(ん?車の音?)

 

緊張しつつ見ていると、

1台の車が現れた。

 

・・・なんと、

 

先日古い携帯を預けた、

お寺の住職だった。

 

驚いたような、

安堵したような顔をして、

 

近付いて来た住職に全てを話した。

 

頷きながら聞いていた住職は、

ここに来た経緯を話し始めた。

 

携帯には邪気が纏わり憑いていた事・・・

浄化の準備中に携帯が無くなった事・・・

何故か●●病院に行かねばと思った事・・・

 

などを話してくれた。

 

話を聞きながら何気なく病院を見ていると、

2階の一室に何故か明かりが灯っている。

 

(・・・・・?)

 

理解出来ない。

 

既に電気も通っていない、

入り口も無い病院に明かり・・・

 

微かに携帯の着信音が聞こえた。

 

ハッ!として確認すると、

確かに握っていたはずの古い携帯が無い。

 

「行くしかないでしょうな。

携帯がなければ浄化も叶わない。

 

供養を任された私としては、

中途半端にはしたくないですから」

 

歩み出す住職。

 

「私も行きます。

一人でいるのは耐えられません。

 

それに、知りたいんです」

 

「・・・ならば、

どこか入り口を作りましょうか」

 

私たちは病院の周りを見て回り、

比較的壊しやすそうな窓に当たりをつけ、

 

車から工具を持ち運び、

窓に付いていた板を外し始めた。

 

相変わらず携帯は着信音を奏でている。

 

なんとか人が通れる程に穴を広げ、

ライトを持って先に住職が入っていった。

 

私も直ぐ後を追う。

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想像のつかない光景を・・・

明かりが点いていたのは2階。

 

着信音も2階から聞こえる。

 

再び湧き上がる恐怖を必死に堪えながら、

住職と共に2階へ。

 

明かりが点いていたのは“204号室”。

 

やっぱり・・・

 

重い足を必死に動かして、

その部屋に向かう。

 

そして、

意を決して部屋を覗く。

 

ベッドが2つ、

向かい合わせにある。

 

「えっ!嘘でしょ!?」

 

ベッドに寝ていたのは、

未だに意識の戻らない2人。

 

「ありえないって!

なんなのこれ!!」

 

既にパニックになり始めていると、

後ろにいた住職が「うわっ!」と叫んだ。

 

「どうしたんですか?」

 

声をかけつつ振り返ると、

そこに住職の姿はなく、

 

変わりに虚ろな目をした

精神を病んだ2人が・・・

 

「ああ!ああああ!!あ!」

 

すっかりパニックになる私の左耳に、

あの女の声が響く。

 

【アハハハハハハハ】

 

慌てて左を振り向くと、

今度は右から。

 

さらに部屋全体にまで響く・・・

 

ここで、

またもや気を失った様だ。

 

気が付くと、

お寺の本堂に寝かされていた。

 

目の前では台の上に古い携帯を置き、

住職が一心不乱に読経していた。

 

「あの・・・」

 

私が声をかけると、

住職はゆっくり振り返った。

 

住職の話によると、

 

あの部屋を覗いた時、

廊下の奥から着信音が聞こえたらしい。

 

住職はそちらに気を取られて

凝視していると、

 

私の叫び声が聞こえ、

慌てて目を戻す。

 

ベッドの上に携帯があったので、

 

その携帯を数珠で縛ると、

倒れた私を抱えて寺まで戻り、

 

それからずっと携帯を取り巻く邪気を

祓い続けていたらしい。

 

あの時に私が見た2人は、

幻覚だと告げられた。

 

「さて、これで携帯に憑いていた

邪気は祓いました」

 

ゆっくりと静かに住職から告げられた。

 

「ありがとうございます」

 

丁寧にお礼を言い、

 

住職のお弟子さんが取って来てくれた

私の車に乗り込み、帰宅した。

 

やっと解放されたのだ。

 

理不尽な霊障に悩まされることも、

もう無いのだ。

 

そう思うと、

とめどなく涙が流れた。

 

そして現在、

 

あの日と同じ日になると来るメールに、

私は未だ悩まされている。

 

何度携帯を変えようとも、

あの日が来る度に・・・

 

私はいつか、

この恐怖から解放されるのだろうか。

 

それとも・・・

 

【ウフフ】

 

そんな笑い声が聞こえたような気がした。

 

(終)

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