だんだん近づいてくる悲鳴
これは私の友人から聞いた話。
ある会社の独身寮で起こったことです。
そこは普段から雰囲気が薄気味悪く、
友人も風呂場から「嫌な感じがする」
と言ってました。
話を聞くとそこは、
寝ていて金縛りにあったり、
夜中に目が覚めると
血塗れの女の人が覗き込んでいたり、
出張でそこに泊まった人が
次の日の朝に真っ青になって出てきて、
残りの日程を自腹でホテルに泊まったとか、
ありきたりの怪奇現象に
事欠かないところだったそうです。
そんなある日の朝、それは起きました。
その独身寮の2階の真ん中の部屋で、
友人の知り合いのA氏が
朝の支度をしていたら、
右の方の奥の部屋から悲鳴が上がり、
そして右隣の部屋からも
悲鳴がまた聞こえてきました。
そう、だんだん悲鳴が
近づいてきているのです。
何事かと思っていたら、
目の前で右側の壁から
男がすり抜けてきて駆け抜け、
左側の壁へ吸い込まれていったのです。
思わずA氏は「うわぁっ!!」と、
悲鳴を上げました。
その直後、左隣の部屋から悲鳴があがり、
そのまま左奥へと悲鳴が続いていきました。
その後、みんな廊下に飛び出し、
口々に「今の見たか!」と
言い合ったそうです。
この話を聞いたとき、
思わず笑ってしまいました!
後日談も因縁話もオチもありませんが、
この寮は老朽化が進み、取り壊されたそうです。
(終)