男女4人で肝試しを楽しむつもりが 2/2

墓地

 

大きな碑の前に着いた。

 

沢山の名前が刻まれている。

 

綿「うぉー、すげーなぁー。

やっぱ、墓はすげーなぁー」

 

何がそんなに嬉しいのか、

ウキウキしている。

 

綿野さんは一人で10分ほども、

ワーワー騒いでいた。

 

注意しようとして、

 

「あんまり騒がな・・・・・・」

綿「しっ!」

 

僕の注意は綿野さんの真剣な声と、

ギラギラして瞳孔の開いた瞳に遮られた。

 

これだ。

 

この目がダメだ。

 

僕は綿野さんのこの目を見るとダメだ。

 

蛇に睨まれた蛙の様に、

(しぼ)んでしまう。

 

反面、

綿野さんはニヤニヤしている。

 

大きな目をギョロギョロさせ、

ニヤニヤしている。

 

綿「キタキター、ハハハー」

 

この人は本気で病気だ。

 

何がそんなに嬉しいのだろう?

 

何がそんなに可笑しいのだろう?

 

階段を上る足音が、

そんなに嬉しいのだろうか?

 

多くの足音が階段を上る音が、

そんなに可笑しいだろうか?

 

心臓が痛い。

 

ヤバイ、ヤバイ、ヤバイ、ヤバイ・・・

本当に怖い。

 

怖い、怖い・・・怖い!

 

綿野さんはウキウキしている。

 

「ヤバイですよ」

 

固唾(かたず)を詰まらせつつ、

声を発する。

 

足音が近付く。

 

ダンダンダンダン!

 

「綿野さん、ヤバイですって」

 

ダンダンダンダン!

 

「本当にヤバイですよ」

 

ダンダンダンダン!

 

もう、すぐ近くに聞こえる。

 

「ヤバイ、ヤバイ、ヤバイ・・・」

 

ドーン!!!

 

綿「かかって来いやぁ!

 

ハハハハハー。

負け犬共がコラァ!!」

 

・・・・・・

 

足音が消えた。

 

僕は状況が呑み込めず、

思考停止。

 

「よかったぁー」

 

ようやく落ち着いた僕。

 

「よかったですね、綿野さん」

 

ふと綿野さんが居た方へ、

視線を移す。

 

僕は、また恐怖した。

 

顔の前、約5センチの距離。

 

つまり、顔の目の前。

 

綿野さんがいる。

 

綿「これが良かった顔と思うか?」

 

そう訊く綿野さんはニヤとしながら、

ブラウンの瞳はギラギラしたままだった。

 

「すいません・・・」

 

綿「帰るよーん」

 

碑を見ると、

キレイな靴の跡がついていた。

 

さっきの大きな音はこれか!

と妙に穏やかに納得したのと、

 

なんて罰当たりなんだと呆れた。

 

女の子たちには適当に言い訳をして、

その日は帰路に着いた。

 

その道中、

 

墓や碑を蹴ったりしたらいけないと、

散々怒った。

 

僕の感覚は恐怖で麻痺していたが、

改めてあの人はキチガイだと思った。

 

(終)

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