キヒサルという話について

猿

 

随分と昔に聞いた話なので、

所々の記憶が曖昧なのですが・・・

 

村の年寄りから『キヒサル(キヒザル)

という話を聞いたことがあります。

 

聞いただけなので字は分からないですが、

 

話の内容からすると『忌避猿』

となるのかも知れません。

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キヒサルを見つけても決して・・・

キヒサルは、

 

群れからはぐれた猿を狙って

体の中に入り込みます。

 

乗り移られた猿(以下キヒサル)は、

 

獣を殺し、

その肉を食べるようになります。

 

また、その外見を利用して、

 

猿の群れに近づき、

手当たり次第に殺して食べます。

 

その食欲は尋常ではなく、

 

キヒサルが現れた山では、

獣の数が一気に減るとまで言われています。

 

結果、山には獣の死骸が

ゴロゴロ転がることとなり、

 

それで猟師や地元民たちは

キヒサルの存在に気付くのです。

 

共食いをするキヒサルを、

特に猟師は忌み嫌います。

 

ただ、トラバサミや柵で捕らえても、

 

キヒサルの本体(ヌシ)は、

乗り移った体から逃げてしまいます。

 

そんな時に残された体は、

 

抜け殻のような”がらんどう”に

なっているそうです。

 

また、鉄砲で撃っても、

キヒサルはなかなか死にません。

 

だからキヒサルが現れると、

猟師は手分けをして山狩りをします。

 

人と違ってキヒサルは道を通るとは限らず、

その一方で火や金物の音を恐れるので、

 

松明を持って銅鑼(どら)や半鐘(はんしょう)

鍋などを叩いて、

 

山裾から山頂へ追いやるようにします。

 

キヒサルが近くにいる気配は、

匂いで分かるそうです。

 

私が聞いた話では、

 

キヒサルが近づくとサビのような

匂いがすると言っていましたが、

 

これは金気臭い匂いではないかと

推測します。

 

キヒサルを見つけても、

間違っても触れてはいけません。

 

ただ、その理由や、

触るとどうなるかは覚えていません。

 

山狩りに参加した人は、

 

ひたすら山頂近くに設置した罠のところへ

キヒサルを追い込みます。

 

草を刈った平地に追い込んだら、

 

木の上に渡してある油を染み込ませた布を

キヒサルの上に落として捕らえ、

 

すぐさま焼き殺します。

 

『ヌシの姿を直接見ると目が潰れる』

 

と言われているので、

このような方法を使うのだそうです。

 

キヒサルの起源は分かりません。

 

もしかしたら、

 

何らかの伝染病(狂犬病みたいなもの)

に対する恐怖が、

 

このような怪物(妖怪?)

創造したのかも知れませんが、

 

猿を媒介する伝染病が

当時の日本に存在したのかは、

 

私の知識ではなんとも言えません。

 

(終)

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