口に出して語ってはいけない恐ろしい怪談 2/2

懐中電灯

 

私たちは動けなかった。

 

声も出せなかった。

 

Uの声ではなかった。

 

転がった懐中電灯が窓を照らしていたが、

誰もそちらを見なかった。

 

Uが喋っているような・・・

 

しかし、

 

別のどことも言えないようなところから

聞こえてくるようでもありました。

 

そこから先は子音が連なっているような

音が聞こえるだけで、

 

内容が聞き取れませんでした。

 

しかし最後にはっきりと、

こう聞こえた。

 

「富士の影がきれいで」

 

その声に反応したように、

一人がUの肩を激しく揺すりました。

 

どう考えても、

 

途中から怪談の続きとしては

文脈がおかしかった。

 

私も半泣きになりながら、

Uを揺すりました。

 

Uはすぐに正気に戻ったようでしたが、

やたらと「眠い」を連発して、

 

気を失うように眠ってしまいました。

 

私たちは顔を見合わせて、

 

なんとなく気まずく怪談話大会を

お開きにしました。

 

どうしても気になって、

 

寝る前にUが用意していた

半紙の最後の件を見ると、

 

『それ以来、ゆきはこの話を

する人間の元に、・・・』

 

ここまで読んで私は半紙を破りました。

 

翌朝、Uは昨日のことを

覚えていないと言いました。

 

「うっそー?!

俺、あれ話したんかー?

 

いや、まあいいよ、どうでも」

 

蒸し返すのも後味が悪くて、

私たちはもう何も言いませんでした。

 

しかし、

 

これだけはなぜか気になっていたので

帰る前に、

 

「富士の影って何?」

 

と聞くと、

 

「富士山の影?それが何?」

 

「いや、なんでもない」

 

なんとなくUには聞きづらいので、

 

お世話になったUの親に

こっそり聞きました。

 

「ああ、満月の夜なんかには

稀に見えるよ。

 

明るくて空気が澄んでて、

 

海面の温度とかの条件が合ったら

夜中でも、ここから」

 

その出来事以来、

この話は誰にも話していません。

 

口に出すのがどうしても・・・

もう生理的にダメです。

 

あの時のUの声が

頭にこびりついているようで。

 

一昨年、私の祖父が死んだ時、

 

通夜で仏さまの傍で寝ていると、

夜中にその祖父の声を聞いた気がします。

 

その声を聞いて、

何かが分かった気がしました。

 

あの時のUの声が女性の声だったら、

 

たぶん私たちはすぐパニックになって

Uを叩いて揺すったでしょう。

 

Uの声は祖父の声のように、

女性とも男性とも我々が直感しない、

 

死者の声でした。

 

(終)

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