コトリコゾウ 1/2

山

 

これは、子供の頃に体験した不思議な話。

 

幼少の頃の記憶が元になっているので、あやふやなところもあるがそこはご勘弁を。

 

まず話は俺が小学校に上がる前の5歳頃のことから。

 

俺はその頃、広島県に住んでいた。

 

そして、オヤジの仕事の都合で引っ越すことになった。(同じ広島県内)

 

引っ越し先は、いわゆる新興住宅タウン。

 

都会で生まれ育った人にはピンと来ないだろうが、要するに山を一つ切り開いて造成し、住宅タウンとして新しく町を作ろう、という感じのところ。

 

当時、広島県にはそういった新しく出来る住宅タウンが非常に多かったらしい。

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大人になってから衝撃の事実を知る

その住宅タウンは、山道を車で上っていくと突然周りが開けて、そこに町があるといった風情。

 

なので、その町は山に囲まれるようになっていた。

 

新しい家に引っ越して来たが、基本的にはまだ田舎だから夜はものすごく暗い。

 

オープンしてまだ間もないタウンなので、人もそんなに多くはなかった。

 

そのせいか、親から俺はこんなことを言われていた。

 

「暗くなるまで遊んでると『小鳥子象』に連れ去られて食べられるよ」と。

 

今にして思えば大人が子供に「早く帰って来い」という意味の脅しなわけだが、子供の俺にしてみれば、『小鳥』の顔をして、でも胴体が『子象』・・・。

 

そんな化け物がいるのかと凄く怖くて、どんなに外で楽しく遊んでいても夕方には必ず帰るようにしていた。

 

うちの数軒隣には、もうかなり前からこの土地に住んでいる家のM子という、俺と同じ歳の女の子がいた。

 

すごく可愛い子で、俺の初恋の子だ。

 

その子ともよく遊んでいた。

 

周りには空き地が数多くあり、また建築途中の家もいっぱいあったので、俺たちはそういう所に忍び込んでは「秘密基地だ!」と言いながら、人形が自分たちの子供という設定で夫婦ごっこをしてみたり、M子の部屋に入って漫画を読んだりして遊んでいた。

 

そんなこんなで小学校に入り、もちろん男の友達とも随分とヤンチャな遊びもしたが、M子とも引き続き遊んだりもしていた。

 

そうこうしているうちに、ある日ふと気付いた。

 

「あれ?M子って同じ歳なのになんで小学校にいないんだろう?」と。

 

ただやっぱり子供なのか、そんな大事なことを「まぁいっか」とあまり深くも考えなかった。

 

ある日、小学校の遠足で、学校の裏山の『G山』という所に登ることになった。

 

G山は、子供の足で頂上まで1時間30分くらいだったと思う。

 

頂上には社みたいな所があり、でも木々が高く昼間でも薄暗くて少し怖かった。

 

列になって山道を登っていると、気付くと横にM子がいた。

 

「あ、なんだ。M子もやっぱり同じ小学校だったんだ。何組だろ?」と思いながら、M子と手を繋いで一緒に登ることになった。

 

ただM子はいつもと違って少し暗い顔をしていて、言葉少なかったのを鮮明に覚えている。

 

どうにか頂上に着き、お弁当タイムということで、M子と一緒に食べようとM子の姿を探したが見つからない。

 

それに、女子と一緒にお弁当を食べていると友達にからかわれるような気もして、その日は結局、下山する時もM子の姿は見えなかった。

 

その日以降、なぜかM子の姿を見ることが少なくなった。

 

いや、これははっきりと覚えていないのだが、そのG山に遠足で登った日以降も、M子と何回か遊んだ気もするし、それっきりM子の姿を見ていない気もする。

 

その辺の記憶はもう定かではない。

 

小学2年の終わりに、俺はまたもやオヤジの都合で今度は東京に引っ越しすることになった。

 

その頃にはもうM子のことはあまり気にならず、別の女の子が好きになっていた。

 

引っ越しで出発する日も、大してM子のことは気にしていなかった。

 

ここまでが子供の頃の話。

 

本題はここからだ。

 

(続く)コトリコゾウ 2/2

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