木の上に作った秘密基地で目覚めた時

薪割り

 

これは、友達が子供の頃に体験した話。

 

友達のアキラ(仮名)は手先が器用で、小学5年生の時に学校裏にある山の木の上に、ゴザや板、その他もろもろを持ち上げて、秘密基地のような小屋を作っていた。

 

とは言っても、トム・ソーヤの冒険に出てくるような立派な小屋ではなくて、木の枝と枝の間に板を差し込んだ、本当に簡易な小屋。

 

何度か登らせてもらったことがあったが、かなり丈夫に出来ており、当時はとても驚いたのを覚えている。

 

ただ雨が降ると、屋根代わりに使っていたベニヤ板の間から激しく雨漏りするのが悩みの種だったが…。

 

ある日、アキラはその秘密基地で眠ってしまったらしく、気がつくと辺りは真っ暗だったそうだ。

 

とっさに「親に怒られる!」と思って体を起こした時、不気味な音を聞いてしまったという。

 

ゴキゴキ、ゴキゴキ。

 

それは、固い物を強引に擦り合わせるような不快な音。

 

「なんだろう?」と小屋から地面を見下ろした瞬間、彼は悲鳴を上げてしまった。

 

曰く、“木の幹を真っ白でむくんだ顔をした、明らかに人間でないものが這い上がって来ていた”というのだ。

 

ソレが、手足を動かす度に「ゴキゴキ、ゴキゴキ」という音を鳴らしていた。

 

その不気味な生き物は、ゆっくりと彼がいる場所まで這い上がってくるや、その真っ白な顔にニターっと笑みを浮かべた後、そのままスーッと消えてしまったという。

 

アキラは慌てて木から飛び降り、足を捻挫してしまう。

 

夜の山の中で、体中に引っ掻き傷をいっぱい作りながら急いで家に帰った挙句、両親にこっぴどく怒られたと言っていた。

 

それ以来、彼はその小屋へは行っていないそうだ。

 

そんな話を聞かされても、「寝ぼけていただけだろ…」と内心では思っているが、『山』ということもあり、本当のところはわからない。

 

(終)

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