不動産屋がその土地と家を売りに出せないワケ
知り合いの不動産屋から聞いた、土地にまつわる話。
ある会社社長のAさんが、その不動産屋から土地を買って家を建てた。
しばらくして、Aさんの一人娘が交通事故で亡くなった。
奥さんはショックで倒れてしまい病院へ。
検査の結果、奥さんの身体に癌が発見され、そのまま入院することに。
会社の経営も傾き始め、Aさんは心労でフラフラになりながらも仕事をこなし、毎日病院に通って奥さんを見舞っていた。
・・・が、懸命な看病の甲斐もなく、奥さんも亡くなる。
娘と妻、立て続けに亡くしたAさんは、ある日その不動産屋に訪れてこう言った。
「今の家に越して来てから不幸が続く。何か曰く因縁でもあるんじゃないのか?」
上得意のお客様にそんな土地を売るわけもないし、もし仮に曰く付きの土地ならば不動産屋には売る前に説明する義務がある。
実際、Aさんの家が建つ前は別の家が建っていて、長い間普通に人が住んでいた。
決して妙な土地ではありませんと不動産屋は答えたが、その後1年もしないうちにAさんも癌で亡くなった。
結局、Aさんの土地と家はその不動産屋へ戻って来たのだが、あの日Aさんが去り際に言った言葉が気になって売りに出せないでいるらしい。
「じゃあ、うちこそが”曰く因縁の始まり”ってわけか」
これでもし売った先でまた人が死んだら俺がおかしくなっちゃうよ。
そう彼は言っていた。
(終)