保険会社に勤める先輩の身に起きた不幸
とある保険会社に勤めている彼氏の先輩の話。
保険屋は、事故現場に行って作業する事がある。
その移動手段は車である為、運転には特に気を付けているそうだ。
自分が事故っては洒落にならないから、と。
そんな彼氏の先輩が事故に遭った。
それも、続けて3回。
霊的なものは信じていない彼氏もヤバイと思ったのか、「一度お祓いに行った方がいいですよ」と先輩に助言した。
しかし先輩は美人な奥さんとの間に子供が出来たばかりで、「そんな縁起でもない事は言うなよ」という感じで流した。
なんで私じゃなかったの!
それからしばらくして、彼氏は先輩に呼び出されて飲みに行った。
飲み始めは仕事の話をしていたそうだが、急に先輩は泣きながら、奥さんにガンが発見されて長くても後1~2年だと言った。
家に居て奥さんの顔を見ると辛くなってしまう事などを話されたという。
「慰めの言葉も見つからなかった」と泣きながら彼氏は話してくれた。
月日は流れて年始に。
私は彼氏と一緒に出かける予定だったが、彼氏にキャンセルされた。
「理由は帰って来たら話すよ」と言われて。
でも結局、彼氏は帰って来てからも理由を言わなかった。
けれど、後になって彼氏がその時の事を話してくれた。
年末に先輩の奥さんが「最後の年越しは家族でしたい」と言って、静かに家族3人の年末を楽しんでいたという。
しかし、その時に食べた物が悪くて、先輩と奥さんは食中毒を起こした。
それまでの入院生活で弱っていた奥さんは特に酷くて、救急車のストレッチャーに固定された。
比較的症状の軽かった先輩は、奥さんの隣に座って救急車に乗った。
そして、この救急車が事故を起こしてしまった。
ストレッチャーに固定されていた奥さんは軽いむち打ちで済んだのだが、横に座っていただけの先輩は車から投げ出されてしまい、打ち所が悪くてそのまま『即死』してしまった。
彼氏に出かける予定をキャンセルされたあの日は先輩の葬式だったそうなのだが、その時の光景があまりにも酷くて、すぐには話す気になれなかったらしい。
先輩の葬式では、余命わずかな奥さんがまだ乳飲み子を抱きながら、「なんで私じゃなかったの!この子はどうなるの!」と泣き叫んでいた光景がしばらく頭から離れなかったそうだ。
あとがき
この話は彼氏から聞いたものだが、その当時の状況や雰囲気からも実話だと思う。
もう6年以上も前の事だから、あやふやな部分もあるが。
先輩の奥さんの余命が1~2年というのは末期ガンだったらしい。
事故を起こした救急車は乗用車に突っ込まれての大惨事だったので新聞にも載ったはず。
残された子供に救いがあるとしたら、保険屋だっただけに手厚く保険をかけていた事か。
(終)