右手が何かに引っ張られた
一番最初に見たのは、
多分この時。
幼稚園の砂場で、
友達とトンネル作ってた。
両方から2人で手を入れて
砂を掻き出していたら、
自分の右手が何かにつかまれて
引っ張られた。
そんなに大きな砂山じゃなかったのに、
一気に肩まで引き込まれた。
砂山の下をくぐるような形で倒れ、
その拍子に砂山が崩れた。
砂山を壊したことが
周りの子の気分を害したらしく、
泣き始める。
泣き声の大合唱に
保母さんたちが集まってきて、
周りの子の「○○が壊した」
という合唱を聞き、
どうしてそんなことをしたのか、
と聞かれた。
腕を引っ張られたと
泣きながらも訴えたが、
信じてもらえなかった。
そのあと、
教室に戻る前に全員で手を洗う時、
袖を捲くったら・・・
右の手首のところに、
爪の食い込んだ痕が残っていた。
血が滲んでいたので、
保母さんが消毒してくれた。
保健室の入り口に、
ボブカットの女の人がいて、
消毒してもらってる私を見ていた。
ボーダーの半袖姿だった。
目が合うと、手を振ってきた。
口だけ笑って目が笑ってなかった。
でも、太ももから下が無かった。
驚いて泣き出して、
そのあとはちょっと記憶が曖昧。
家に帰った後、
怪我のことを聞かれて、
砂場で腕を引っ張られて
倒れたと答えたら、
いじめられてると誤解して、
母親が幼稚園に
報告の電話を入れてたのを覚えてる。
(終)