ここがおかしい場所だという事を悟った
幼稚園の頃、ふざけてよく大声で騒いで先生に怒られている男子が数人いた。
その男子達が叫び出すと他の子達も一斉に叫び出すのが組のお決まりで、その度に先生も「○○くんと○○くん!みんなも静かにしなさい!」と怒っていた。
そんな中、当時の私は静かな子で、よっぽどの事がない限り誰とも話さないタイプ。
みんなが叫んでふざけている時も、一人で絵を描いていた。
私もちょっと叫んでみよう
ある日、雨が降っていた為、普段は外で遊んでいる子達も教室の中で遊んでいた。
そして、またお決まりの数人の男子が大声で叫び、後に続くように他のみんなも叫び出した。
沢山の子が一箇所に集まっているだけあって、いつもとは比べ物にならない程の騒音。
みんなやってるし、私もちょっと叫んでみよう、と好奇心から私もとても小さな声で「あぁーーー」と言ってみた。
すると、「いい加減にしなさい!うるさいんだよ!」と怒鳴る先生の声が聞こえ、次の瞬間、腕を掴まれて教室の外に体が投げられるのを感じた。
雨に濡れながら呆然としていると、教室の入り口を塞ぐように腕組みをして仁王立ちした先生がいた。
それに、先生の後ろには組のみんなが立っていた。
「静かにしろって言ったでしょ!どうして分からないの?」と凄い剣幕で私を睨みながら捲くし立てる先生の後ろで、いつも筆頭になって騒いでいる男子数名もこちらを睨んでいる。
それを見て猛烈に腹が立った私は、「謝ったら教室に入ってもいいよ」と言う先生の言葉を無視して、雨の中を裸足で歩いていった。
裏庭を歩いていると、よその組の男子が四つん這いにされて泣いているのを見つけた。
その男子の隣では、その組を担当していた先生が、「手を使わないで食べるのは犬のする事よね!?○○くんは犬なんだもんね!?」と怒鳴っていた。
その時、私は子供心に『ここがおかしい場所』だという事を悟った。
卒園が近かったことが唯一の救いだった。
(終)