私が顔を近づけて覗いていたのは実は・・・

目

 

高校時代の冬の事。

 

朝4時に学校へ行き、部室で一人テスト勉強をしていたことがあった。

 

そして、まだ暗いうちに朝ご飯を買いにコンビニへ行こうと思い立ち、学校近くの繁華街にあるコンビニへ行った時だった。

 

途中の道端に、作業着のようなものを着た男の人が寝ていて、「うわあ・・・」と思いながら顔をちらっと見ると、結構なイケメンだった。

 

早朝のせいか人通りもほとんどなかったので、私も少し大胆になり、かなり顔を近づけてその男の人の顔を覗き込んだ。

 

やっぱりイケメンだった。

 

すると、向かいの方から一組のカップルが歩いて来たので、私も我に返ってコンビニに慌てて入り、おにぎりや飲み物を手にとっていた。

 

そして買い物が終わって外に出ると、周囲に赤い光が充満していた。

 

そこらに警察やら救急隊がわらわらといて、赤い光りはパトカーや救急車のランプだった。

 

もっとよく見てみると、さっきのカップルが興奮気味に警察に事情を話していた。

 

救急車は急ぐ様子もなく静かに去って行ったが、わずかに聞こえた会話から、どうやらあのイケメンの男の人は発見された時点で死んでいたらしい

 

そういや私が見た時も、寝息も聞かなかったし、まったく動かなかった。

 

何より、その日の明け方はすごい冷え込みで、そんな中で作業着だけで寝ていたら凍え死んでしまう。

 

その時は全く気付かなかったが、私があの時に顔を近づけて至近距離で覗いていたのは『死人の顔』だったようだ。

 

(終)

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