深夜、私たちの寝室を窓の外から覗く人
これは、私が小学校高学年の時の話。
父と母はいわゆるデキ婚。
母はかなり頭が良くて銀行に務めていたが、父は要領が悪くフリーターだった。
しかし、何の家族計画もせずに仕込んだのが長女の姉。
その次に私、そして妹が生まれた。
子育ての為にと、母は父を信じて銀行員を辞めてパートで働くようになった。
姉は知っていたらしい
だが、父は母の稼ぎに頼りっきりで、さらには浮気を繰り返し、違法な薬物にも手をつけ、挙句は私が10歳の頃に離婚した。
そして、娘3人ともが母を選んだ。
昔は優しかった父の薬に染まった顔が忘れられなくて、父方の祖母の家にも近寄らなかった。
母も同じだったらしく、4人で夜逃げのようにその時の家を出た。
新しいアパートに住んで数ヶ月が経った頃、私は夜中にふと目が覚めてトイレに行った。
用を足して布団のある部屋に戻ってみると、その部屋のベランダに通じている窓から人が張り付いてこちらを見ていた。
部屋は真っ暗だったので、向こうから気付かれたかは今でも分からない。
ただその時、私は固まってしまった。
そして気付くと朝になっていた。
当時は怖さと同時に好奇心もあり、その次の夜も夜更かしをして窓を見ていた。
夜中の2時くらいになった頃か、誰かがやってきて私たちの寝室を覗いていた。
その人は窓を叩くでもなく、写真を撮るでもなく、本当に“覗くだけ”だった。
視線の先は分からなかったが。
当時からオカルト好きだった私は、次の日の朝、姉に相談した。
姉は知っていたらしい。
どうも一週間くらい前から居たようだ。
しかも、その人の正体を知っていた。
「あれ、パパだよ」
毎夜、夜中に女4人の家を黙って覗く男は薬中の父だった。
そして、そんな父が今年自殺したと聞いた。
(終)